『CITY HUNTER』の『GET WILD』じゃない方! 『RUNNING TO HORIZON』
裏稼業に生きる主人公のハードボイルドな活躍を描いた北条司先生の代表作『CITY HUNTER』。
ハイテンションな下ネタを交えたギャグシーンと、アダルティーな雰囲気が漂うアクションシーンの配分が絶妙で、2000年代に入ってからもリメイク作の『エンジェル・ハート』がスタートするなど、現在進行形で様々な展開をしている作品です。
『CITY HUNTER』のアニメ版には、主題歌を手掛けるアーティストとして、小比類巻かほるさんや岡村靖幸さん、TM NETWORKといった有名ミュージシャンが参加。豪華アーティストが揃った楽曲は、何れも人気が高く、それらを集めたコンピレーションアルバムも後にリリースされています。
そんな名曲揃いな『CITY HUNTER』主題歌の中でも、その代名詞的な楽曲となっているのがTM NETWORKの『GET WILD』でしょう。
ソリッドな描写が続く歌詞とデジタルサウンドの融合が何とも印象的なこの曲は、『CITY HUNTER』という作品の雰囲気にもピッタリ! まさに、80年代を代表するアニソンの一つですよね。
しかしながら、今回は敢えて、この『GET WILD』"じゃない方"の主題歌である『RUNNING TO HORIZON』に注目してみたいと思います!
この曲のどこに注目かというと、何といってもヴォーカルです。第三期作となる『CITY HUNTER 3』のオープニング曲として使用されていたこの曲を歌っているのは、何と、TM NETWORKの小室哲哉さん!
後に、超売れっ子プロデューサーとなる"TK"こと小室哲哉さんのソロデビュー作となるこの曲。TKのソロシングルでヴォーカル曲って、何気にレアな気がしますよね。
ただ、『RUNNING TO HORIZON』も残念ながらシリーズの後期に使われた楽曲であり、更に、『CITY HUNTER 3』自体の放映期間も短かった為に、『GET WILD』に比べると哀しいかな、認知度では後塵を拝してしまっている気がします。
しかしながら、これがTKサウンドバリバリのシンセポップで、とにかくカッコ良い曲なんです! また、その個性的なヴォーカルも一度聴いたら耳に残ること必至です。
『CITY HUNTER』ファンからは、小室さんの歌唱力に対してやや辛口の評価が付くことも多いのですが、TM NETWORKでヴォーカルを務めた宇都宮隆さんの力強い声に比べると、線の細さこそ否めないものの、だからこそ小室氏の歌声がこの曲に唯一無二の個性を与えているように思います。
作詞に小室みつ子さん、作曲、小室哲哉さんという『GET WILD』と同じクリエイターが揃いながらも、ヴォーカリストの違いと放送時期のタイミングで大きな差が出てしまった『RUNNING TO HORIZON』。名作アニメにおける、影の主役として、一度、聴いて欲しいナンバーです!
『うる星やつら』の『ラムのラブソング』じゃない方! 『星空サイクリング』
高橋留美子先生の代表作の一つであり、ラブコメの金字塔的な作品となっている『うる星やつら』。
アニメ版も長期シリーズとなり、劇場映画も製作される程の大人気に。特に劇場版二作目の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は、アニメファンからの評価も高く、今も尚、アニメ映画史における不朽の名作として支持されています。
そして、『うる星やつら』の主題歌といえば、やっぱり『ラムのラブソング』!
「あんまりそわそわしないで」「好きよ…好きよ…好きよ…(ウッフン)」という愛らしくも艶っぽい歌声が印象的なこの曲は、様々なアーティストにカヴァーされ、また、CMソングとして幾度となくリメイクされる等、現在まで歌い継がれるアニソンとなっています。
ただ、『うる星やつら』には、この曲以外にも素晴らしいナンバーが沢山あるのです! そんな楽曲の中から、今回は、『星空サイクリング』をご紹介させていただきます。
番組のエンディング曲として使用されていた『星空サイクリング』は、80年代のテクノポップを代表する楽曲の一つでもあります。寧ろ、アニメファンよりもテクノポップファンからの評価が高い曲かもしれません。
歌っているのは、ヴァージンVSというテクノポップなニューウェーヴバンド。実は、このバンドは、『赤色エレジー』のヒットや、『僕は天使ぢゃないよ』『オートバイ少女』といった映画作品の監督としても知られる異色のフォークシンガー、あがた森魚さんが結成していたバンドなのです。
80年代に、あがたさんがニューウェーヴに接近し、生み出された『星空サイクリング』。そんな尖ったミュージシャン、バンドが音楽面をバックアップしていた点も『うる星やつら』の見逃せないポイントといえます。
また、ヴァージンVSには、あがたさんの他にも80年代のジャパニーズテクノポップを代表する重要人物の一人であるライオン・メリィ氏が参加していたり、『ラムのラブソング』の作曲者である小林泉美さんは、ドイツのニューウェーヴシーンを象徴するミュージシャン、ホルガー・ヒラーと接点を持っていたり……と、『うる星やつら』には、テクノポップにまつわるコアなネタが沢山あります。
80年代という時代性も手伝い、ピコピコしていたり、ニューウェーヴだったりな楽曲が沢山ある『うる星やつら』。その周辺情報を調べていくと色々な音楽トリビアに出会えます。『星空サイクリング』は、そんな作品の音楽性を象徴するナンバーであり、『うる星やつら』における裏番長的な楽曲だと思うのです。