水田:これは最早BUCK-TICKとは関係ない話なんですけど、私「アルバム」という概念があんまり最近ないんですよ。
――世代的に…?
水田:というのは、私中学生くらいの頃には既にiPod shuffleがあったんです。だからアルバムごとに云々っていうのは、あまりないんですよ。
――そういうギャップの話は興味があります。
水田:だから、自分がリアルタイムで追ってるのは、やっぱり楽しみにして、そればっかりを聴く時期っていうのがあるから、アルバムとしての認識はあるんですけど、それ以前の、自分が追っかけて来た曲、後追いで聴いた曲って、あんまりアルバムごとの曲として認識していないというか…。
ニッチ:なるほどね。
水田:あと、個人的な曲の好みというか、そういう話に関して言うならば、初期の曲って、同じ時代を過ごしていないから分からない部分がすごくあるんです。曲はすごく好きだけど、歌詞がちょっと「分からない」わけではないけど自分の気持ちや感覚とリンクしない。
――固有名詞がわからないとかではなく? 例えば、電話がダイヤル式だったりとか…。
水田:どちらかというと時代の空気みたいなのが分からないというか。それがカチッと分かるようになったのが、『RAZZLE DAZZLE』くらいですね。空気って言うよりは「あ、こういう、なんかもっと大きい引いた目で見てるんだな」っていうのが認識できるようになってみたいな。
山川:しかし、アルバムというと本当に悩みますよね。他には…『狂った太陽』も好きなんですけど。まぁ全部好きです。
ニッチ:そうなんですよね。すごく悩むんですよね。でもどうしても10代の頃に一番衝撃をくらっているものが強いというか。他には、好きというか衝撃を受けたのは、『シェイプレス』ですね。
――『シェイプレス』はまだ国内で一般的には知られていないテクノミュージシャンを起用し、さらに当時まだ一般的ではなかったリミックスアルバムという先鋭的な作品ですよね。
ニッチ:僕は当時、テクノに傾倒している時期でもあったので、Aphex Twinも大好きだし、BUCK-TICKも大好きという状態で聴いたんです。もちろんそういう人は周りにも何人かいたんだけど、みんなが「う~ん」ってなったんです。
何故かというと海外のテクノミュージシャンはBUCK-TICKというバンド自体に愛情がない感じもしたし、一方BUCK-TICKはそれにダメ出しできるほど(テクノ等のダンスミュージックに対しての)音楽的な力量がなかったような印象を受けて、それがすごくショックだったんですね。つまり、自分の好きなアーティストを自分の好きなアーティストが邪険にしてしまっているような。
それで少し落胆して、「早く次の作品出ないかな~」と思いながら。で、そのあと出た『Six/Nine』も、なんとなくそのへんの影響も感じられつつも、そのあと、『COSMOS』はさんで『SEXY STREAM LINER』ですぐガチガチに打ち込みやるじゃないですか。
――はい。
ニッチ:あんなにテクノ系の人達に邪険にされた感じがあったけど、今井さんはそれでもやっぱり打ち込みをやり、テクノロジーを入れた音楽を導入したいのは痛いほど伝わってきて。
だから『シェイプレス』を経て、外部ではなくて、ちゃんと自分たちでやろうって、『SEXY STREAM LINE』をガッチリ作ったのかなみたいなことをちょっと感じたりとかします。
――『シェイプレス』って、初期からだんだん打ち込み寄りになってくるの過渡期の象徴というか。
ニッチ:ゴシックな部分とかもそうですけど、おそらくはイギリス、ヨーロッパの流行りを気にしてたというか、影響を受けていたんじゃないのかな。
山川:今井さん、元々YMOとかが好きで、本当だったらシンセサイザーとかやりたいって言ってたんですよね。で、高くて買えなかったからギターやったというのはインタビューでもよく語られてますよね。