1981年に公開され、薬師丸ひろ子の人気を不動のものとした赤川次郎原作の『セーラー服と機関銃』。その続編に当たる、橋本環奈主演の『セーラー服と機関銃 -卒業-』が、角川映画40周年記念作品として公開された。
前作『セーラー服と機関銃』は、アイドル映画でありながら、平凡な女子高生がある日突然やくざの組長になり、子分を従えながら敵対するやくざと闘うという奇抜なストーリー、相米慎二監督独特の長回し撮影(カットせずに長い間カメラを回し続ける技法)などの意外性が話題を呼び、薬師丸が機関銃を撃った後で吐く「カ・イ・カ・ン」というせりふも大流行した。
その後、82年には原田知世、2006年には長澤まさみ主演でテレビドラマ版が作られるなど、アイドルの登竜門的役割を果たしてきた。
本作の橋本は、福岡を拠点とするアイドルグループ「Rev. from DVL」のメンバーで、“1000年に1人の逸材”“天使過ぎるアイドル”と称される16歳。
アイドル映画製作の王道とは、スタッフや共演者の誰もが、若いヒロインを輝かせるための努力を惜しまないことだが、本作も、前田弘二監督をはじめとするスタッフ、共演者の長谷川博己も安藤政信も鶴見辰吾も伊武雅刀も、そして武田鉄矢までもが橋本の引き立て役に徹し、まさに彼女のための映画になっている。
そして、彼らが本来ならば照れてしまいそうな役柄をきちんと演じ、橋本がそれに応えたからこそ、大の大人(それもやくざ)がたった一人の小娘のために命を投げ出す純情、それはヒロイン星泉に宿る母性に起因するという隠れテーマが浮かび上がってくるのだ。
前田監督は相米監督ばりの長回しを披露し、薬師丸と共に相米監督の『翔んだカップル』(80)に主演した鶴見が本作にも出演。もちろん橋本による「カ・イ・カ・ン」のシーンも用意されるなど、相米作品への敬意も込められている。
また、ラストは『時をかける少女』(83)の原田のように、橋本がドラマを離れて主題歌「セーラー服と機関銃」を歌う。透明感のある薬師丸の声とは対照的なハスキーボイスが印象に残る。そんな本作は、80年代に一世を風靡(ふうび)した角川アイドル映画の伝統を久しぶりによみがえらせたと言えるだろう。(田中雄二)