今作『ズートピア』は、自分自身を受け入れる、というテーマから、さらに歩みを進めている。
メッセージは、
「自分は自分。けれども、どんな自分になるかは、自分で決められる」
というものだ。
極めて個人的な話で申し訳ないけれども、学生時代を思い出した。
当時、若者らしく、社会との折り合いの付け方を見つけられず、迷っていた私は、「“隠された真実” など幻想で存在しない」という教授の言葉に、目から鱗が落ちた。
「実存主義」についての講義だった。
たとえば、小学生の母親が「この子は、本当はやれば勉強ができるんですよ」と言ったとき、この小学生は、勉強ができる子なのだろうか、それともできない子なのだろうか。
母親としては、我が子を信じるのは、素敵なことだ。
けれども、社会では、存在しないものを、ありがたがってくれることはない。
実際に、どう考え、どう行動し、何を成し遂げたかがすべて。
勉強ができるという評価を得たければ、よい成績を取る以外に、方法はない。
一見、厳しいように思えるかもしれないけれど、実際には、希望に満ち溢れた考え方だ。
なぜなら、「何を成し遂げたかがすべて」であれば、どんなに頑張ったところで自分はダメな人間だ、などと考える必要は一切ない。
自分の評価を決めるのは、存在しない “本質” などではない。
未来の自分は、自分自身で決めて、行動し、いくらでも創っていけるからだ。
ジュディもニックも、それぞれ悩み、迷い、間違いを犯す。
どん底から、どう考え、どう行動し、何を成し遂げるのか。
そして、どのような自分になろうと志すのか。
見届けるには、映画館へ足を運ぶのが一番だ。
■ディズニー映画『ズートピア』
2016年4月23日(日)全国公開