「意地でもバンドがやりたくて」
――今回の作品を通して聴かせていただいた時に、全体を通して「LIPHLICHっぽいな」って思ったんですけど、その感覚を今日のお話伺ってから思い返すと、なかなか感慨深いです。
久我:自分でも「LIPHLICHっぽい」って思うし、その「LIPHLICHっぽい」が嫌になってしまった部分もあるんですよ。マンネリというか。「これ以上このままやってても音楽的な進化はないな」って思っちゃったんですよね。最近、どんなバンドサウンドを聴いても、「うーん…。」って思ってしまって、そんな状態がここ1年ぐらい続いてます。
例えばアンビエント系の音楽とか、全然バンドサウンドじゃないものに関してはグッときたりするんですよ。でも俺はバンドの音としてちゃんと新しいこと、良いと思えるものを追求していきたい。意地でもバンドがやりたくて……。思考がソロっぽいというか、1人で何でもできちゃうんですけど、やっぱりバンドがやりたい。
――今、「バンドのコスト高い問題」みたいなことが言われていますよね。アイドルやラップって、少ない機材でできてしまうから、バンドはコストパフォーマンスと起動力で勝てない……、みたいな。それでも今、バンドサウンドにこだわる理由ってなんなんでしょうか?
久我:やっぱり単純にバンドサウンドが好きなんですよね。ベースとドラムとギターとヴォーカルがいて、っていうのが好きだし、夢を感じるんですよ。
例えば、別にギターがなくても音としては成立すると思うんです。SEKAI NO OWARIとか流行ってるけど、彼らはギターにこだわってるわけじゃないじゃないですか。でもSiMなんかみたいに、ゴリゴリのバンドサウンドで新しくてカッコいいことやってる人たちもいるわけで。
……それにもう、僕にはメンバーがいますからね。僕はLIPHLICHをメインで作ってますし、みんなの人生を背負っている感覚っていうのは少なからずあります。だから、バンドサウンドとしてカッコいいことの追求をやっていかなきゃなと思って、今いろいろ考えてます。
――LIPHLICHと同じ、ちょうど結成5~6年のバンドを取材させて頂くと、皆さん過渡期というか、自分たちを振り返る時期に入っているのを感じます。
久我:みんないろいろ考えているんでしょうが、もちろん僕も考えますね。LIPHLICHは細く長く続けるんじゃなくて、ちゃんと上を目指したいです。武道館に立ちたいし、名声欲もあります。
ヴィジュアル系、言いたかないですけど暗黒時代ですよね。最初にテレビにドカンと出てから、もう出来上がりきってしまったカルチャーな部分があると思うので、このままじゃつまんねーなと思うことありますよ。最近同じような展開の曲が多かったり、同じようなルックスの複製に感じてしまうバンドも多かったり……。
――Aメロでヴォイヴォイ言って、Bメロでテンポ落ちてサビで開ける……、みたいな?(笑)
久我:(爆笑)。それをカッコよくやっている人はすごくいいと思うんですよ。本当にそういうのがやりたくてやってる人って、観ているほうにも伝わるもんじゃないですか。でも、「お前、明らかにそういうのじゃねーだろ?!」って人もいますよね(笑)。
安易に選択して、同化してしまっているバンドも多いと感じるので、それは個人的にあまり面白くないと思います。LIPHLICHはそこには迎合したくないので、「面白くないことやってるクソにはぜってぇ負けねえ」って思うし、「なんか寂しいな」と思ったりもします(笑)。孤独を感じると言うか。
――いわゆる“売れ線”を狙って、オリジナリティーが乏しくなってしまっているバンドまではいかなくても、LIPHLICHも「“売れ線”を狙って少し迎合してみようかな?」って思ったりはしないんでしょうか?
久我:思わないですね。みんながみんなそういう風に考えちゃうと、ますますシーンが廃れていっちゃうと思いますし。そこまでヴィジュアル系の歴史に詳しいわけではないのですが、ひと昔にBAROQUE(バロック)が出てきた時はすごかったじゃないですか。ああいう風にシーンをガラッと変えちゃうバンドって、今いるんですかね?
――今のヴィジュアル系インディーズシーンって、1つのバンドがブレイクすると、あからさまに似たようなルックスのバンドが次の瞬間一気に増えるっていうのはありますよ。
久我:あはは、なるほど(笑)。僕も清春さんの影響を多大に受けてるので、好きだから似るっていうのはわかるんですけど、100メートル上を見上げるゆえに似るのと、安直に一段上のバンドに寄せるのはまた違うんじゃないかなって思ってしまいますね。