神林美智子役の菅井友香(欅坂46)

 2019年「黒い羊」で日本レコード大賞優秀作品賞を連続で受賞し、NHK紅白歌合戦でのパフォーマンスも話題を呼んだ欅坂46のキャプテンを務める菅井友香が、1月29日から上演される舞台「飛龍伝 2020」で舞台初主演を果たす。本作は、1973年に発表された、つかこうへい3部作の中の一つで、学生運動の時代を舞台に、女性革命家の神林美智子が、革命の夢と現実と愛に翻弄(ほんろう)されながら生きる姿を描く。これまで広末涼子や黒木メイサ、桐谷美玲など、名立たる女優たちが演じてきた、神林役に挑む菅井に、役柄への思いや意気込みを聞いた。

-本作が舞台初主演となりますが、稽古をスタートした今、どのような心境ですか。

 最初にこのお話を聞いたときは本当に驚きましたが、つかこうへいさんが亡くなって10年というこのタイミングで、この作品に関わることができるのがすごくありがたいですし、うれしい気持ちでいっぱいです。

-不安やプレッシャーは感じていますか。

 それはもちろん、すごく感じています。これまで神林美智子を演じてこられた、歴代の女優さんも素晴らしい方ばかりですし、この作品を皆さまにしっかりと伝えなければいけないという責任感もあって不安な気持ちは大きいですが、今は前向きに頑張ろうと思っています。

-神林美智子を演じるに当たって、どんなところを意識していますか。

 まだ(稽古中のため)これからだとは思いますが、現時点では、美智子は人のために動いている人物だと思っています。誰かを守ろうと行動していて、自分の思う正義を常に持っている人なんです。だからこそ、いろいろなことに巻き込まれてしまっているんだと思います。でも、それも誰かのせいだとは思っていなくて、ただやるせなさを感じているところがあると思うので、そういった彼女の真っすぐな部分を伝えられたらと思っています。

-共感できる部分はありますか。

 うーん、何だろう…。料理があまりできないところかな(笑)。美智子はお米をとぐのに洗剤を使っちゃったり、皮手袋でお米をといじゃったりするんです(笑)。私はそこまでではないですが、その気持ちは分かります(笑)。

-美智子は40万人を束ねる委員長という立場の女性ですが、リーダーという意味では欅坂46のキャプテンを務める菅井さんとも共通する部分はあると思います。それについてはいかがですか。

 40万人を束ねるという美智子とはスケールは違いますが、私自身もキャプテンを務めさせていただいていて、メンバーを守りたいという気持ちは同じだと思います。なので、もちろん理解できる部分も多いです。でも、キャプテンとしてまだ自分には足りないものも多くて、それを持っているのが美智子だと思うので、この役を務めさせていただく中で、そういったところを自分のものにできたらいいなと思っています。

-具体的にどんなところが足りないと思っているのですか。

 自分の主張を相手にぶつける強さとか、思いの強さとか、芯の強さを見習いたいです。

-今回は、欅坂46とは違い、男性ばかりの現場になりますが、稽古場には慣れましたか。

 初めての環境で驚くことも多いですし、筋トレがとてもきついです(笑)。お稽古の最初に、皆さんと腕立てや腹筋とかの筋トレをするんですが、それがきつくて…(笑)。でも、役を演じていく中で、私も筋肉が必要だと感じていますので、本番までに仕上げたいです。それから、お稽古中も、男性陣の迫力はすごいですし、皆さんが一生懸命ぶつかってきてくださるので、私もそれに応えられるように頑張らなければいけないと思っています。

-今、稽古をしていてどんなことが課題になっていますか。

 威厳が足りないのをすごく実感しています。数日前に、稽古中の自分の姿を映した映像を見たんですが、自分が想像していた姿と全然違ったのですごく凹みました。なので、頑張らなきゃと思っています。もともと、滑舌もよくないので、それもトレーニング中です!

-今回はラブシーンもあると思いますが、それについてはいかがですか。

 美智子はその育った環境のせいで、すごく愛を求めている人物だと感じています。だからこそ、人をすごく好きになると思うし、守りたいと思うのだろうと思うので、演じている中ではあまり意識することなくできるんじゃないかなと思っています。でも、改めて考えると緊張しちゃいます(笑)。今はまだ、お稽古でも、緊張してしまうことが多いです(笑)。

-今回は、欅坂から離れて、個人での活動となりますが、グループを離れての活動だからこそ欅坂に対して感じることもあるのではないですか。

 そうですね。グループでの活動も個人での活動もどちらもすごく楽しんですが、やはり欅坂のメンバーと一緒にいるときは、安心できます。私の戻る場所なんだなと改めて思いました。欅坂に対する愛情もより深くなった気がします。

-個人での活動では、グループを背負っているという意識もありますか。

 あります。やはり、どこにいっても「欅坂46の菅井友香」であるということは自覚しなきゃいけないと思っていますし、「欅坂46の菅井友香」だからこそ、この舞台にも挑戦させていただけていると思っています。背負っているものはしっかりと感じているので、自覚を持って行動したいと思います。

-2020年の目標は?

 まずは「飛龍伝」を成功させることだと思いますが、今、舞台の楽しさをすごく感じているので、これからもまた何かの形で関われたらうれしいなと思っています。それから、今年はオリンピックもあって、私は馬術競技のアンバサダーも務めているので、馬術の魅力を伝えられる年にしたいと思います。個人的には、海外に行きたいです! 2019年は、行きたいと思っていたのに、行くことができなかったので…。いろいろなものを見て、感じて、自分の心を豊かにしたいです。

-最後に、公演を楽しみにしているファンの方々にメッセージを。

 いつも応援してくださってありがとうございます。「飛龍伝」は、自分にとってもすごく大きな挑戦で、不安もありますが、強い思いを持って死に物狂いで頑張ります。見に来てくださった方の希望になれるような作品になればいいなと思っています。応援よろしくお願いします。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「飛龍伝 2020」は1月29日~2月12日、都内・新国立劇場 中劇場(1月29日はプレビュー公演)、2月22日~24日、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで上演。
公式サイト https://www.rup.co.jp