小西桜子(ヘアメイク 松田陵(Y’s C)/スタイリスト 倉田強)

 話題作を続々と手掛ける名手・三池崇史監督の下、豪華キャストが集結した痛快エンターテインメント『初恋』が2月28日から全国ロードショーとなる。本作で、やくざ同士の抗争に巻き込まれ、主人公・葛城レオ(窪田正孝)と共に逃避行を繰り広げるヒロイン、モニカ役に大抜てきされたのが、小西桜子。これが映画出演2作目の新人ながら、劇中では内野聖陽、大森南朋といった名優たちに劣らぬ存在感を発揮している。今年は本作の他、『ファンシー』(公開中)、『映像研には手を出すな!』(ドラマ4月放映/映画5月15日公開)など出演作が続々と公開され、注目必至の逸材だ。そんな小西に撮影の舞台裏、女優業に対する意気込みなどを聞いた。

-オーディションを経て出演が決まったときのお気持ちは?

 まさか決まるとは思っていませんでした。半信半疑で「これからどうなるんだろう…?」と思うのと同時に、うれしさやいろんな感情が湧き上がってきて、「うわーっ!」となりました(笑)。ただ、そのときは、まだ他の出演者の方々のことは聞いていなかったんです。だから、しばらくして皆さんのお名前を知ったときは、本当にびっくりして腰を抜かしました(笑)。

-モニカはPTSDによって幻覚に苦しむという難しい役ですが、演じてみた感想は?

 やはり、難しかったです。いろいろな作品を見たりして事前に知識は入れていましたが、「どう演じるか」までを考える余裕はありませんでした。その上、今までほとんどお芝居をしたことがなかったので…。でも、「考えてもどうにもならない」と思って、まっさらな状態で三池監督から演出指導を受けました。その上で、自分なりにモニカと重なるところを見つけて、表現するようにしました。

-三池監督の演出はどんなふうに?

 三池監督は、お芝居の経験がない私を尊重してくださって、「素直にモニカとして、感情が動くままにやればいいよ」と言ってくださいました。シーンごとに「こういうふうに動いてみて」と、演技指導をしていただくことはありましたが、お芝居の軸としては、ありのままの私で演じさせてくださったと思います。

-モニカが幻覚を見ているときの目が、真に迫っていて圧倒されました。演じる上では、どんなことを意識しましたか。

 撮影中はとにかく必死だったので、あまり覚えていないんです。ただ、毎回「このシーンが最後だ」という気持ちで演じていました。三池監督にも言われていたことですが、ものすごく大きな映画だし、この映画は私にかかっている…という緊張感が役とずっとリンクしていたので、空き時間も気を抜かず、お芝居がつながるようにずっと緊迫感を保っていました。いい意味で追い込まれながらやったことで、あの演技につながったんじゃないかと思います。

-劇中では、新人とは思えない堂々とした存在感を発揮していますが、プレッシャーには強い方でしょうか。

 強い方かもしれません。プレッシャーがあっても、「自分がさらに成長できる」と思えば、ワクワクしてくる方です。負けず嫌いなところもありますし、「緊張した」とは言っても、実際はうれしさや、やる気の方が勝っていました。

-そういうところが、大変な撮影を乗り越えるバネになったと?

 それはあるかもしれません。毎シーン、毎シーン、「うまくいかなかったな…」と落ち込みながらも、毎日帰りに「明日こそは頑張ろう!」と、自分で自分を奮い立たせながらやっていましたから…。おかげで、精神的にもだいぶ強くなりました(笑)。

-レオ役の窪田正孝さんとは『ファンシー』から2作続けての共演となりますが、印象は?

 この作品が決まったとき、最初はすごく不安だったんです。でも、窪田さんが一緒だと知って安心しました。『ファンシー』のときから、すごく優しくて、面白い方だと思っていたので、またご一緒できると分かって、うれしかったです。レオとモニカは、心を通わせていく関係ということで、前回より距離感も近く、現場で一緒にいることが多かったので、合間にいろんな話をしていました。

-これが映画出演2作目とのことですが、女優を志した経緯を教えてください。

 もともと、映画が好きで、大学でも映画の勉強をしていたんです。でも、見るのが好きなだけで、初めは出演する側に回りたいという気持ちはありませんでした。でも、ちょうどその頃、先輩が監督する自主映画に出ることになったんです。その現場で、すごく楽しんで映画を作っている様子を見たことと、完成した映画を見た友だちからいい感想をもらえたことがうれしくて…。そこから、「女優になりたい」と思うようになりました。

-それからどうやって女優に?

 2017年の年末ぐらいから、いろんなオーディションを受けたり、事務所に履歴書を送ったりする活動を始めました。そうしたら、半年ぐらいたった2018年の6月頃、今のマネジャーさんにスカウトしていただいて。それがきっかけで、このお仕事をさせていただくようになりました。

-この作品で女優として学んだことは?

 たくさんあります。中でも「お芝居って楽しいものなんだ」と思えたことが、すごく大きかったです。今までは一生懸命やることに精いっぱいで余裕がなく、「楽しむ」という感覚になれなかったんです。でも、この現場では三池監督や他のキャストの皆さん、スタッフの方々が本当に楽しそうに映画作りをしていたのが、すごく印象的で…。そういう空気感に影響されて、初めて「楽しいな…」と思うことができました。だから、気持ちはすごく変わりました。

-女優として普段から心掛けていることは?

 日常の過ごし方が、今までとは大きく変わりました。以前は一人で過ごすことが多かったんですけど、今は感受性を高めるために、いろいろなことにアンテナを張って、いろいろな場所に出掛けて人と会うようにしています。そうしているうちに、いろいろな感情を素直に出せるようになってきました。

-今年の目標は?

 まずは、一つ一つのお仕事を、誠実に、心を込めてやっていきたいと思っています。その上で、去年は映画に出演する機会が多かったので、これからはドラマや舞台など、幅広くいろんなところで、いろんな役をやっていけたら…と。将来的には、人の心を動かすお芝居をして、心を届けられる女優になりたいです。

(取材・文・写真/井上健一)