『フォレスト・ガンプ/一期一会』 ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan

 前回に続き、見終わった後、少しだけ幸せな気分になれる映画を紹介しよう。

『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)

 アラバマで生まれたフォレスト(トム・ハンクス)は知能指数が低く、高校時代までいじめを受けていた。ところが、偶然、俊足の持ち主であることが判明し、大学ではアメフトの選手として大活躍。軍隊時代は戦友の命を救い、全米卓球チームの一員として訪中。その後、エビ漁で得た資金を元手に億万長者となるが隠せいし、最後は平和を願って走る人になる…。

 ロバート・ゼメキス監督が描く、無垢(むく)な心を持ったフォレストの人生は、自らの意志とは無関係に変転し、やがて彼はアメリカの英雄となっていくのだが、同時に、最愛の母(サリー・フィールド)、初恋の人ジェニー(ロビン・ライト)、戦友のバッバ(ミケルティ・ウィリアムソン)、上官のテイラー中尉(ゲイリー・シニーズ)ら、出会った人々の人生も大きく変えていくところが面白い。

 また、母がフォレストに「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまで分からない。だからこそくよくよせずに強く前向きに生きろ」と説くせりふは、「人生における幸不幸は予測しがたい」という中国の故事「人間万事塞翁が馬」にも通じる金言だ。

『陽のあたる教室』(95)

 1960年代から現代まで、公立高校で音楽教師を務めたホランド(リチャード・ドレイファス)の半生をスティーブン・ヘレク監督が編年体で描く。生活のために教師になり、音楽家になる夢を捨てた自分は人生の敗者だと思っていた男が、多くの生徒に影響を与えた人生の勝者だったというのが、この映画の大きなテーマとなる。原題は「ホランド氏の作品」。つまりその作品とは生徒たちのことなのだ。

 主人公が音楽教師ということで、もちろん授業ではバッハ、ベートーベンといったクラシックが流れる。また、ホランドは、クラリネットが苦手な女生徒のためにアッカー・ビルクの「白い渚のブルース」を教え、耳の不自由な息子のために手話を交えながらジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」を歌ったりもする。

 最後は、定年を迎えたホランドを送るために、新旧の生徒たちが一同に会して彼が作曲した交響曲を演奏する。音楽を媒介とした教師と生徒の心の交流が心地よく展開していく名編だ。(田中雄二)