タカラバイオは、新型コロナウイルスを検体からウイルスRNAを精製する前処理工程を必要とせず、反応時間が1時間未満で、迅速、簡便に検出可能なPCRキット「SARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kit」を5月1日に発売した。Cy5フィルターを搭載したリアルタイムPCR装置で使用する。税別価格は100回分で12万円。月産2万キット(200万回分)の製造が可能。
通常、新型コロナウイルスのPCR検査では、鼻咽頭ぬぐい液などの検体から、市販のRNA精製キットを用いたウイルスRNAの精製を行う工程(約1時間)が必要となる。今回のPCRキットでは、独自技術によって簡便な前処理操作のみで、この工程を省略することができる。さらに、同社の高速PCR技術を採用することで、PCR反応時間が大幅に短くなり、トータルの検査時間を従来の方法に比べ半分以下の約1時間に短縮できる。
また、同キットはPCR検査に必要な調製済みの全ての試薬(簡易抽出試薬、PCR酵素液、プライマー/プローブ、陽性コントロールなど)が含まれており、煩雑な準備作業が不要。前処理方法も、簡易抽出試薬を反応チューブに添加し、加熱するだけという非常に簡便な方法を採用し、ウイルスも不活化されるため、検査現場の負担も軽減でき、安定した結果を得ることが期待できる。同社のqPCR装置(Thermal Cycler Dice Real Time Systemシリーズ)だけでなく、各社のqPCR装置への適合性を確認している。
さらに、タカラバイオが開発した検体由来成分による反応阻害を受けにくいPCR酵素を採用しているため、従来法と同じ感度と精度が得られる。同キットを用いた試験では、「1反応あたり50ウイルスゲノムコピー以下」の検出感度が確認されている。
同キットは研究用だが、国立感染症研究所によって検査データの精度確認が行われ、ホームページで「迅速な検査方法(逆転写及び遺伝子増幅が1時間未満のもの)」として公開されている。このため、行政検査に使用できるだけでなく、公的医療保険の適用対象にもなる。今後、医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品として承認取得を目指す計画。
なお、同キットの製品化にあたっては、群馬パース大学大学院の木村博一教授(前・国立感染症研究所感染症疫学センター第六室長)から監修を受けている。