■漫画家=金持ちとは限らない

ならばプロ漫画家はみな裕福なのかといえば、そうでもないらしい。『海猿』『ブラックジャックによろしく』で知られる漫画家・佐藤秀峰の運営するオンラインコミックサイト
漫画 on Web[https://mangaonweb.com/] 。ここの日記や公式ツイッター発言は、そうした情報の宝庫だ。

氏によれば、2009年に単行本を発行した漫画家はおよそ5300人。そのうちトップ100人の印税収入は約7000万円だったという。トップ100というからには前記『ONE PIECE』の尾田栄一郎も含めたうえでの数字だろう。

いっぽう残り5200人はといえば、平均が約280万円までガタ落ちする。上位2パーセントの人気漫画家が印税の1/3を独占し、残った2/3を98パーセントの漫画家でシェアしている形だ。当然、なんらかの事情で1年に一冊も本を出せなかった漫画家もいるだろうし、そういう人はアシスタント代などの経費だけでも赤字になる。そもそもデビューしたものの連載にまでこぎ着けられない漫画家は最初から蚊帳の外である。

さて、いまやメジャー漫画家となった人でも、過去を遡れば貧乏に苦しんでいる時代があった。たとえばアニメ化され、オタク層を中心に絶大な人気を誇る『神のみぞ知るセカイ』作者・若木民喜。飛び抜けた画力、京大文学部卒という学歴までもつ彼だが、まだヒット作を出す前の2008年には自身のブログ内で「預金残高が一万円を切った」ことを嘆き、ネット内で大いに話題となった。

意外な貧乏時代といえばメジャー中のメジャー、『HUNTER×HUNTER』『幽遊白書』でおなじみの冨樫義博。彼の連載デビュー作『てんで性悪キューピッド』単行本を読み返すと、興味ぶかい記述がある。1989年11月6日に描かれたとされるオマケ4コマ漫画から抜粋してみよう。

クイズ
 とがしは、この作品を完成させたとき、サイフにいくらお金を持っていたでしょう
 なんと168えんだ!! これ痔じゃ自分が載ってる雑誌も買えやしねーぜ ヘルヘル
 わかるかい? オレは金もうけのためにマンガを描いてるんじゃねェ
 生きるためなのさ(自慢じゃねーが借金もあるぜ)

……なんというか当時の壮絶な暮らしぶりが伝わってくる。この10年後に世界的ヒット漫画『美少女戦士セーラームーン』作者の武内直子と結婚し、いまや本人も日本を代表する稼ぎ頭の作家となった。夫婦あわせての総資産額は168円どころか、そこに「億」がついたって驚かない。そんな彼でも、一歩間違えばいまだ借金生活が続いていたかもしれないと思うと、漫画家がみんなリッチなどとは到底いえないだろう。