エンディングノートのススメ

親世代が元気なうちに、家族で相続についての話し合いをするのがベストですが、子供世代からはなかなか言い出しづらいテーマです。

いきなり、「相続」について話し合おう!と言われても、言われた方は戸惑ってしまうでしょう。

そこで、まずは「エンディングノート」の活用をおすすめします。「エンディングノート」とは、万が一のことが起こった時に備えて、あらかじめ自分の想いや、家族や知人に伝えたいことを書き留めておくノートや手紙のこと。

エンディングノートには特に決まった形式はありませんが、ご家族へのメッセージ、ご自身の意向や、友人知人の名簿、家系図、財産目録等を記しておくためのものです。

ワードやエクセルなどのデータ形式でも、大学ノートに手書きで記入でもOKです。インターネットから無料ダウンロードできるフォーマットもあるようです。

最近では市販のエンディングノートも多岐にわたり、基本的な項目のみのシンプルタイプや、いくつも細かく項目が分類されたきっちりタイプまで、様々な種類の中から好みに合わせて選ぶことができます。

必ずしも高齢者向けというものでもありませんので、世代を問わず抵抗なく手に取れるように「これからノート」や「もしもノート」と言われることもあるようです。

親世代に書いてもらいたい場合、ポンとノートを渡すだけではなく、「いざというときのため、記入しておいてもらえるとありがたい」という子供世代の想いをきちんと伝えておくべきでしょう。

親世代が自ら記入することが難しい場合は、子供世代がサポートしながらひとつひとつの項目を埋めていく作業が必要なケースもあります。

相続を考える最初の一歩として役に立つエンディングノートですが、法的な効力は持たないため、実際の相続手続に関しては、正式な遺言書等を準備する必要がありますのでご注意ください。

私自身、6年ほど前に初めてエンディングノートを書いてみたのですが、目からウロコの体験でした。

それまでは自分自身の介護や延命治療、葬儀について具体的にイメージしたことはありませんでしたが、ノートに書くことで、人ごとではなく自分にも起こりうることとして考えることができました。

いつ、どのように死を迎えるのかは誰にもわかりません。日々の慌ただしさから離れ、じっくり考えてみる機会は大切だと実感しました。

先人の「事例」に学ぼう!

相続関連の書籍の中でも、最近のトラブル事例が記載されているものも多くあります。今回のように、財産が不動産で分割しづらい事例など、数ある事例の中からご自身の家庭に近いモデルケースを見つけることができるのではないでしょうか。

図書館でも、相続関連のコーナーを見ると、実際の「争族」トラブル事例が掲載された書籍をよく見かけます。それほど、一般の方の関心が高い分野なのです。

ある程度は、ご自身でも相続の予備知識をもちつつ、個別の実際の対応については見落としなど無いように、相続分野に詳しく実務経験豊富な、FPや行政書士、税理士や不動産鑑定士等の専門家の手を借りることをおすすめします。

2015年1月1日以降、相続財産の基礎控除額が大幅に引き下げられました。

このため、以前よりも多くの方々が相続税を負担するようになりました。今後も税制は改正されるため、現在しっかりと相続税対策ができている方でも、数年後には税制が変わっている可能性があります。

そのため定期的な見直しと確認は必須です。遺産分割のみならず、税金や各種手続等、様々な問題が複雑に絡みあうのが相続問題のやっかいなところです。

日本人特有の「言わなくてもわかってくれるだろう」という感覚は、こと相続に関しては思わぬ争いの種となりかねません。

心の中で想っているだけでは、残したい相手に、残したいものを確実に渡すことはできないのです。

家族のかたちはそれぞれで、ひとつとして同じではありません。様々な事例を参考にしつつ、ご自分の場合はどのような準備が必要なのか考え、いまできることからはじめてみてはいかがでしょうか。

【執筆者】髙柳 万里

ファイナンシャルプランナー/キッズ・マネー・ステーション認定講師
金銭教育を受ける機会が全くないまま社会人となっていたことに愕然とし、必要に迫られて平成二十年にFP資格取得。「みらいの自分を養うのはいまの自分」をモットーに、保険分野を専門にアドバイスしています。

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2023年までに2000件以上の講座実績を持つ。公式サイト「キッズ・マネー・ステーション