DOTAMA 撮影:市村 岬

DOTAMA:2017年現在、MCバトルシーンだったり、ヒップホップはものすごく盛り上がっていると思います。自分も全然、若輩者で、生意気なのですが、15年間、日本語ラップを聴いていたり、プレイヤーとして参加させてもらっていて、そう思います。すごいカッコイイ曲が毎日YouTubeに上がって、全国の至るところでサイファーが行われ、テレビにも沢山のラッパーが出ている。

ただ、他ジャンルに比べると、音楽としてのリスナー人口は少ない。いろんなジャンル、音楽形態でラップという表現を使っているミュージシャンは沢山いて、ラップ自体は浸透していますが、ヒップホップはまだマイノリティではある。

変えるためには我々、アーティストが大きくならなければならない。今も尚、先輩、同世代、後進の死にもの狂いの努力を見ていますし、非力ですが、自分ももっと頑張らなければと思います。

松永:確かに。バンドとかアイドルポップスの中にラップパートが入ってるものはずっとありましたけど。

DOTAMA:自分がヒップホップというジャンルを代表して、ここで語るのもホントにおこがましいんですが、大きな音楽フェスで、ヒップホップのアーティストが出るというのはありますが、ヒップホップ自体の大きなお祭りというのはないんです。

ロックにも何万人のフェスはあるし、レゲエは「横浜レゲエ祭」という3万人集まるフェスがある。「高校生ラップ選手権」が武道館で開催されて、何千人もの方が集まったのはすごいことだし、そういうフェスやイベントをヒップホップの力でやらなければならない。

どさくさですが、さっき言ったような野外フェスのヒップホップアーティストとして、自分もホントに勝負したいし、出させてもらいたい。そして貢献したい。今回のツアーでも、他のジャンルの方とご一緒したのはそういう気持ちがあります。より多くの、様々な音楽を聴く方に自分のライブを見てもらいたい。楽しんでもらいたい。そしてその自信があります。

松永天馬 撮影:市村 岬

松永:でも今の若者にとってはラップの方がロックよりも自分の気持ちが叫べるというか、言いたいことが言える音楽と捉えられてるなと感じます。「高校生ラップ選手権」の盛り上がりは、10代にとっての「青年の主張」現代版という感じがする。

数年前にSEALDsっていう学生を中心とした政治団体がいましたけど、ベトナム戦争だったら学生運動はロックをBGMにしてた。それが彼らはヒップホップをBGMにしてたということがすごく象徴的だなと思ったんですよね。

ロックはすっかり反抗の音楽という像から程遠くなってしまって、今はどちらかというと優等生が軽音楽部でスポットライト浴びながらやっているイメージ。ラップが現代における反抗の音楽を担っている気がする。10代の子たちはそういう気持ちでラップを聴いているのでは。

DOTAMA:なるほど。自分はラッパーで、ラップが表現のデフォルトなので日常的になっていたのですが、そのご意見、分かります。ロックにも通じる表現としてのかっこよさがラップにはある。あと、ラッパーの僕が言うのもアレなのですが、ロックだけではなく、お笑いや映画にも通じる魅力がラップにはあると思います。

松永:音楽だけじゃない、話芸やパフォーマンス力も試される文化。

DOTAMA:大喜利的な面白さだったり、韻を踏むという言葉遊びの楽しさや、1曲3分で48小節、言葉で物語を語ることもできる。もちろん音楽である上で。複合的な魅力があると思います。だから今の、情報が多い時代にこそ楽しんでもらえる表現だと。

松永:それでいて今の時代は、逆に情報が少ないものも、勝手にリスナーが情報を付与していくんですよね。例えば「これが萌える」「この人とこの人でBLが成り立つんじゃないか」と、勝手に二次創作して、自分たちでおいしくしていっちゃう。で、一次創作者が更にそれにレスポンスして両者で組み立てていくというか。DOTAMAさんと僕がこうして喋ってるだけで、みんなが色んな妄想をしてくれるんですよ!(笑)。