松永天馬/DOTAMA 撮影:市村 岬

「DOTAMAさんはモラルハラスメントの歌で、僕はラブハラスメントなんだ」(松永)

――松永さんは今年に入ってソロ活動を、DOTAMAさんは昨年新バンドFINAL FRASHを結成しています。

DOTAMA:たしかに。同じタイミングですね。

――おふたりの考えるバンドとソロの違いを伺いたいです。

DOTAMA:僕の場合、音楽的領域を拡張するというよりは、the telephonesのメンバーと昔から友達で、活動休止のタイミングもあって「一緒になにかやらない?」みたいな感じだったんです。バンドでのライブと、「1MC+1DJ」でのライブは、動き方から歌い方から、すべてが違いますね。

松永:アーバンギャルドはメインボーカルが女性で「病的にポップ、痛いほどガーリー」というコンセプトを掲げながらこれまでやってきました。ひとつ強烈な世界観があって、その大きなくくりの中でCDを出したりライブをやったり。同じシリーズの映画を撮り続けているような感じ。

それはそれで好きなんだけど、今までとは違う作品を作りたいと感じて一度ソロをやってみたいなと思ったんです。十分大人と呼ばれる年齢にもなって、若い頃とは違う、今まで知らない自分に出会いたくなったというか。

アーバンギャルドはプラスティックな少女の世界をコンセプトにしている。その半面、自分自身の男性性やドロドロした部分を生々しく出すようなことをやりたいという欲望が、30歳を過ぎた頃からふつふつと沸き始めた。フィクションに対するドキュメント。ソロの方がやっぱり人のことを気にしなくていいじゃないですか。

DOTAMA:グループはグループの楽しさがありますが、ソロはソロの良さがありますね。

DOTAMA/松永天馬 撮影:市村 岬

松永:バンドって仲間に委ねられる、自分でもわからない部分をメンバーの想像力でカバーしてもらえる良さもあるんですけど、それと同時にバンド内での役割みたいなものが時に自分を押さえつけるじゃないですか。

気がつきゃ作家デビューさせてもらってるし、NHKの教育番組でレギュラーやってるし、講演に呼ばれたりもするようになって、なんか肩書も増えてしまって偉そうになっちゃったなって……一度そういった諸々をチャラにしたくなったんですよね。リスナーが抱いている「松永天馬」というイメージを脱ぎたくなったというか。まあ実際MVとかでも脱いじゃってるんですけど。

今までの「松永天馬」像を一度チャラにしてやりたくなったときに、ソロというのが一番有効な手段だったんです。

DOTAMA:自分の中に、結構エグめの言いたいことがあっても、内容がキツすぎるとメンバーに迷惑がかかるかも……と書くのを躊躇するときは確かにあります。

松永:メッセージ性みたいなものを出すときに、やはり他のメンバーとのコンセンサスが必要になってくることもありますもんね。

DOTAMA:6月に『謝罪会見』というシングルを出させてもらったのですが、誰かが何か問題を起こすと、関係者でもないのに「謝れ」「責任を取れ」とバッシングをする人にひと言言いたくて「謝れ謝れうるせえな 正義病のクルセイダーズ」というdisを入れたんです。それはソロだったのですが、もしバンドだった場合、後ろ(にいるメンバー)をちょっと気にしていたと思います。

松永:わかります。僕は先日、ソロデビュー曲『ラブハラスメント』を発表しました。今は愛の告白をしてもハラスメント扱いになるのでは? という、色んなことに敏感になりすぎている世の中への警鐘ですね。「あ、DOTAMAさんはモラルハラスメントの歌で、僕はラブハラスメントなんだ、これは近いぞ」と。

DOTAMA:『ラブハラスメント』も拝聴しました。SNSで人が人に意見を言いやすい時代で、顔の見えない、無責任な言葉も多くなる。その反面、敏感になり過ぎるのもよくないですよね。他人を批判するときは言葉に責任を持とうよ、っていう一方、ぶっちゃけ人の浮気がバレたのなんてどうでもよくね? 人のミスにもっと鈍感でよくね? という真逆のメッセージも込めて『謝罪会見』は書きました。