それよりも、筆者が本舞台の情報を見て驚いたのがキャストである。

なんと、主人公となるヤン・ウェンリーを演じているのが河村隆一なのだ。

……いや、実はこの舞台「銀河英雄伝説」ではずっと河村隆一がヤンを演じているため、別に今さら驚くことでもないのだが、しかし河村隆一というキャスティ ングにはちょっとびっくりした。そもそも年齢が違う。ヤンは29歳の設定だが、河村隆一は今年43歳だ。一回り以上違うのに、本当に違和感なく演じられる のか……?
 

 

そんな心配はしかし、舞台が始まるとすぐにかき消えた。河村隆一、意外とヤンにハマっているのである。そもそも見た目が若く、43歳にはとても見えないということもあるのだが、それ以上に優しくてちょっと頼りない雰囲気で、しかし戦争になると天才的な采配を振るうヤンに河村隆一の柔らかいトーンの声、そして柔和な表情が合っているのだ。河村隆一もヤンを演じて長いので、そうした慣れからくる余裕もあるかもしれない。とはいえ、LUNA SEA世代である筆者としては、河村隆一の新たな一面を見た気がしてとても楽しめた。ちなみに劇中ではユリアンがヤンの年齢をいじるかけあいがある。これはもちろん原作にはないお遊び的要素。舞台はこういう演出が面白い。
 

 
 

その他のキャストも、だいたい原作のイメージ通りといっていいだろう。本作の登場人物はけっこうな数がいて、しかも横文字の名前なので、何も知らずに見ると最初は戸惑うかもしれないが、すぐに顔と名前が一致するようになるはずだ。それくらいにキャラクターが立っていて、ちょっとしたやりとりを眺めているだけでも楽しめてしまう。誰に注目するかは自分次第。カメラを通した映像を見るわけではない、舞台ならではの醍醐味といえる。