もう一つの特筆すべき点は、「内乱」という複雑なストーリーを実にわかりやすくまとめていることだ。「銀河英雄伝説」の軸となるストーリーは銀河帝国と自由惑星同盟による戦争だが、今回は「内乱」がテーマであり、両者が直接ぶつかる場面はない。銀河帝国の内乱と、さらに時を同じくして発生した自由惑星同盟のクーデターに、ラインハルトとヤンがどう対処していくのかが見どころとなる。

これはつまり、銀河帝国と自由惑星同盟の中にそれぞれ対抗勢力が現れるということだから、合計4つの勢力による戦いを一つの舞台で描いていくわけだ。話の構造としてはそこまで複雑ではないものの、これを舞台でまとめてやるとなるとかなりややこしい。いったいどうするのかと思いながら見ていたのだが、巧妙な場面転換とわかりやすく整理された脚本のおかげで、難なくストーリーを追うことができた。おそらく過去作以上に演出とシナリオをまとめるのは大変だったのではないかと思うが、よくここまで完成度を高められたものである。
 

 

4つの勢力を行ったり来たりするストーリーだけに、舞台装置もかなり大掛かりだ。銀河帝国、自由惑星同盟、イゼルローン要塞を次々に切り替えながらもストーリーの進行を阻害することのない、絶妙なセットチェンジにもご注目いただきたい。

なお、本作にはジャニーズグループの「Kis-My-Ft2」から横尾渉(キルヒアイス役)と二階堂高嗣(ミッターマイヤー役)の2人が出演しており、河村隆一やベテラン舞台役者たちに負けない熱演を見せている。特にキルヒアイスは今回のストーリーの裏主人公とでもいうべき重要な役どころ。難しい演技をどうこなすのか、公演期間中にどう成長していくのか。千秋楽へ向けて、彼らの成長を見守るのも舞台の楽しみ方の一つである。

舞台「銀河英雄伝説」は青山劇場にて現在公開中。公演は4月13日まで行われる。

やまだい・ゆうき 映画、漫画、ゲームなどエンターテインメント関連の記事を中心に執筆するフリーライター。飲料では特にコーヒーとカフェオレをこよなく愛しており、これまでに数百もの缶コーヒーの感想を記録している。ブログ