「平均的な子ども」に合わせる時代は終わりつつある

よくある親の悩み:周りの子どもと我が子を比べて、落ち込んでしまう。

北川さん「『平均的な子どもと比べないように』と思っても、そんなに簡単にはできません。幼稚園や学校というものに子どもが行っている限り、周りには何十人もの平均に近い子どもたちがいるのです。その子たちを見るな、というほうが無理でしょう。

一昔前までは、左利きの子どもは、右利きに矯正をされていました。今では、左利きであっても、そのまま左手で字を書き、ご飯を食べ、はさみや楽器も左利き用のものを、少ないけれども手に入れることができるようになってきています。

『左利きでもそのままで生きていく方法や道具』がそろっていない時代であれば、右利きの子どもに合わせることが生きていくための方法だったかもしれませんが、時代とともに生き方は変わっていきます。

発達障害を持つ子どもにも、同じような時代の変化が何十年か遅れてやってきています。

発達障害がある子どもを、周りの『平均的な子ども』に合わせることを一生懸命考える、という時代が終わりつつあります。周りに合わせるのではなく『自分を分かり、自分に合わせる』子どもを育てていくことが、これからの時代には必要になってくるでしょう」

「子どもの未来を信じる気持ち」を持つために

よくある親の悩み:いつもの我が子が幼稚園など集団や社会に出ると違う顔を見せて戸惑う。

北川さん「当事者でない人が、当事者の視点に立つことはとてもむずかしいことです。

例えば、発達障害の一つであるADHDで衝動性が強く、ちょっとしたことで周りのお友達に暴言を言ってしまう子がいたとしましょう。その子自身は『友達に暴言を言ってはいけない』ということは分かっているのです。

そんな子に親が『なんで暴言を言っちゃうの!』と言っても、本人も『なんでだろう…言っちゃいけないって分かってるのに…』となってしまいます。衝動性のせいでコントロールできずやってしまっていることなのですから。

発達障害のある子ども自身は、まだ幼く、自分と周りの違いを自分の言葉で説明する、なんてことはできなくて、それに本人が苦しんでいるのであれば、ますます説明する余裕なんてありません。

でもそんなとき、親として信じたいことは『本当はこの子は優しい子なのに』ということではないでしょうか。心の中ではそう信じる気持ちがあっても、実際に我が子が暴言を言ってしまえば、信じる気持ちがゆらいでしまうこともあります。

そんなときには、第三者から『特性があってコントロールができなかっただけで、お子さんは、本当は優しい子ですよ』と説明してもらうことで、親にとっても心の余裕と未来を信じる気持ちが生まれます。

療育というのはその『信じる気持ち』の先にあるものです。まずは親が第三者に頼ることで、少しでも多くの余裕を持てる環境を作るのをおすすめします」