[番外編]夢を捨てきれずに一念発起!“ひとりよがり転職”から再起を遂げた野心家女子

ここまで例に挙げた“ひとりよがり転職者”に共通するのは、「転職の際に自分の武器となるものが何なのか」を認識できていなかった点です。しかし、彼らのような転職志望者も少しの工夫と努力で再就職の道を切り開くことはできる、と関口さんは言います。

「若い転職者の中には、経験の浅さから自分の経歴を武器にできず、志望する業界への再就職を諦めてしまう方が多くいます。しかし私が知る人事の方々は口をそろえて『それは大きな思い違いだ』と言います。そう、ポートフォリオがなければ自分で作ってしまえばいいのです」

関口さんが企業の人事から聞いた“ひとりよがり転職者”のエピソードの中には、自分でポートフォリオを作り、見事に採用を勝ち取った人達の成功例も数多くあります。
小さなデザイン事務所に務めていたS子さんも、そのひとりです。

彼女は当時、企画段階から携わって雑誌や書籍を生み出すことに憧れていました。しかし、務める会社が下請けを専門としていることもあり、回って来るのはデザインの修正や素材集めといった単純作業ばかり。このままではいつまで経っても夢に近づけないと思い、ついに退職を決意したそうです。

ところが、業界での経験が浅く、会議で企画を通したこともないS子さんは、転職活動を続けるうちに自分に武器がないことを認識し始めます。そこで彼女は、前職で携わった仕事をひとつひとつ振り返り、ある行動を起こしたそうです。

「彼女の場合、デザイナーとして下請け仕事をする中で『自分ならこの企画をこうするのに』『ここをこうしたらもっと良くなるはず』という考えを持っていました。そこで『これまで携わってきた仕事を改善するにはどんな企画に変えればいいと思うか』を企画書としてまとめて面接へ持っていくことにしたそうです。その結果、彼女の作戦は大成功。実績がないことを認識した上で自分なりに工夫し、能力をアピールしようとする姿勢が、人事に高く評価されたそうです」


転職活動において忘れてはならないのは「自分を評価するのは、あくまで他人である」ということ。どんなに自己評価が高くても、自分を客観視できていなければ、それは単なる“ひとりよがり”の可能性アリです。

今まさに退職や転職を考えている方は、少し深呼吸をして友人や同僚の意見に耳を傾けてみるのもいいでしょう。他人の目に映った自分の姿を知ることは、あなたに思いも寄らぬ気づきや自信を与えてくれるはずです。

【関口舞さんプロフィール】
poolside inc代表。朝日新聞web就活コンテンツインタビュアー・人材系webメディアでの記事執筆や企業に対する採用支援活動などを行い、現在は新卒・就活・転職webマガジン「sketch」の編集長を務める。

株式会社エディトル所属。IT系雑誌やムックの編集業のほか、コミック、文芸、お笑い、ライフハックなど多分野の記事を執筆。絵が描けないくせにイラストのディレクションに手を出し始めた今日この頃、この仕事はなんでもありなんじゃないかと思い始めている。