【番外】そこまでやるか!?――『鉄鍋のジャン』

最後に超絶キワモノ系の“最高にうまそうな肉”シーンを紹介したい。登場するのは1995年から週刊少年チャンピオンで連載された料理バトル漫画『鉄鍋のジャン』。その最終決戦で飛び出した「生のダチョウ肉」がそれである。

料理は勝負だ!と言い切り、とにかく相手よりうまい物を作って屈服させることが生きがいの歪んだ主人公・秋山醤(ジャン)。最強の若手中華料理人を決定する大会で、決勝戦の課題がダチョウ肉だった。肉質にクセはないが逆に目立った味わいもない……という難しい素材に対し、ジャンが出した回答は“生のまま最高にうまく食わせる”だった。

発想は普通にすばらしいのだが、問題はその方法である。彼は密閉容器に入れたダチョウ肉に無菌ハエをたからせ、その卵から孵った幼虫――いわゆるウジ虫――でダチョウ肉に濃厚なコクを付加したのだ。調理法を知らない審査員たちは「最高の肉だ!」と褒めちぎったが、真相が発覚したあとのオチはご想像の通り。激怒する者、吐く者が続出して大会はメチャメチャになった(この作品ではこれが通常運転)。

少年漫画の主人公としてこれはどうなのかという議論はさておき、ダチョウという素材の珍しさ、ゲテモノに見えて意外と合理的な発想はファンからもいまだに評価が高い。筆者個人としては「一番食べてみたい漫画の肉は何ですか?」と訊かれたら、おそらくこの“ダチョウの生肉(ウジ虫入り)”を選ぶだろう。他にも20年近く前の作品とは思えないほど斬新でうまそうな肉料理が登場するので、肉好き・グルメ漫画好きな人に強くオススメしたい古典の秀作である。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。