新国立劇場はこの5月、バレエ『コッペリア』を上演する。フランスの振付家、ローラン・プティ(1924〜2011)の代表作の一つで、同劇場では2007年以来度々上演している人気演目だ。日替わりで登場する主役4組に名を連ねる池田理沙子、奥村康祐に話を聞いた。

まず作品のあらましについて尋ねると、「従来の版と違って、より現代的な雰囲気。舞台はフランス。エスプリが効いた、独特の世界観がある」と奥村。『コッペリア』はもともと19世紀後半に成立、ポーランドの農村を舞台にほのぼのとした恋物語が展開されるバレエだが、1975年初演のプティ版は、物語のカギを握る人物・コッペリウスに独特の存在感を与え、よりお洒落で大人っぽい作品に。
二人は2017年の上演時に本作に初主演。ヒロイン・スワニルダについて池田は、「一途に、純粋にフランツに恋心を寄せていますが、その若さゆえの思いを強く表現していかないと、ラストのちょっとほろっとしてしまうところに結び付かないと思うんです。プティの振付はコケティッシュな雰囲気を求められることが多く、その世界観を体現するのがすごく難しかったです」と振り返る。
奥村も自身の役を「フランツはスワニルダと恋人同士だけれど、他の女の子も気になる(笑)。最初の登場から葉巻を吸っていたり、ちょっと格好つけたり、フェロモンが出るような振付なので、そういったニュアンスを出せるよう意識しました」と明かす。
もう一人の重要人物、コッペリウスは、スワニルダそっくりの自動人形を作り、自らの孤独を慰める、風変わりで少し恐ろしげな老紳士だが、当初プティ自身が演じたことでも知られる。この役に、新国立劇場バレエ団のスターとして長く活躍していた山本隆之と新鋭の中島駿野が配されたことに「驚きました!!」と興奮気味の奥村だが、共演する中島との演技について「予想がつかない(笑)。それだけに楽しみ」と期待させる。コッペリウスの人形とのダンス・シーンはプティならではの独創的な場面。奥村は「振付も感動的ですが、あの場面でぐっとコッペリウスの人間性、日常が見えてくるのが面白い」と指摘。池田は、「最後の場面のコッペリウスもグサッときます。メッセージ性の強いシーンですね。このプティのバレエは日本ではなかなか観ることのできない作品ですし、大人のエッセンスが加わったバレエでもある。ぜひ楽しんでいただけたら」と語った。
公演は5月1日(土)〜8日(土)、新国立劇場オペラパレスにて。チケットは4月11日より発売。

取材/文:加藤智子