撮影:源賀津己

M&Oplaysプロデュース『DOORS』が5月16日(日)から東京、群馬、新潟、富山、大阪、愛知、福岡にて上演される。作・演出の倉持裕と主演の奈緒に話を聞いた。

倉持が約1年半ぶりに作・演出を手掛ける新作公演。「一言でいうと、パラレルワールドに行ってしまった母親を取り戻そうとする女子高生の奮闘を描くお話です。去年は世界中の予定が狂っちゃったと思いますし、僕自身も『本当だったらこうだったのに』ということを折に触れ思ったので、それについて書きました。“そうであったはずの世界”と“こうなってしまった世界”を行ったり来たりしながら進んでいきます」

主演の奈緒は倉持作品初参加で「すごくうれしいです。以前、『火星の二人』(作・演出:倉持裕)を観に行ったときに、出演者の竹中(直人)さんが『倉持くんと一緒にやってほしいな』と言ってくださったんです。私自身も倉持さんの作品は拝見していますし、いつか本当にご一緒できたらと思っていました」と喜ぶ。そんな奈緒の役どころは「奈緒さんは純粋なかわいさも、怖さも表現できるのがいい。今回は両方やってもらいますよ。こっち側の世界とあっち側の世界、それぞれで性格が違うので」(倉持)と当て書きしたのだそう。奈緒以外のキャストもそれぞれふたつの性格があり、「ただそれは別人格ではなくて、同じ遺伝子を持った人間が、人生の選択でどちらを選んできたかや、経験、社会的なことで性格が変わっていった、というようなもの」と、本作ならではの6人×2役が見られるという。

ドラマや映画での活躍が目覚ましい奈緒だが、「舞台は年1回は立ちたい」と言う。「稽古があるっていうのがすごく大きいです。みんなで作品を追求する時間は、なんて贅沢で幸せなんだろうって思うから。そして本番は、目の前に観てくださる方がいて、公演ごとに空気も変わるし、昨日とは違うお芝居になったりもする。映像の、永久に残り続ける良さとは真逆のところで輝いているものだと思いますし、その刹那が好きです」

今、新作を書くうえで倉持は「去年は“負けないように”みたいなメッセージを入れたい気持ちもありましたが、今年はもう少し客観的で、今はこの1年で得たものと失ったものを見て、それを検証しているところです。ただこれからはこんなことも言ってられなくなると思うんですよ。どこもそうだけど、演劇界もものすごい負債を抱えているわけで、“売れなきゃ”“絶対当てるぞ”という方向になっていくはず。だから純粋なものづくりができるのは今のうちかも(笑)」。そんな本作は、5月16日(日)から30日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演後、6都市を巡演。

文:中川實穂