撮影:石阪大輔

演劇の新たな在り方を提案する舞台『Another lenz』が5月15日(土)に開幕する。脚本・演出の磯貝龍乎と、出演者の太田将熙(主演)、碕理人に話を聞いた。

本作は、同じ台本でありながら、⽣観劇と生配信とで全く異なる世界が⾒える新感覚舞台<AD(Another Demention=別次元)×STAGE>の第⼀弾となる作品。「自分の目、カメラの目、それぞれの“目=レンズ”を通してみることで、同じ脚本でも意味が変わっていく。そういうコンセプトでつくる舞台です」(磯貝)。もちろんどちらか一方だけでも楽しめるが、両方観ることでより楽しめるようなつくりになっているという。

とある廃墟でライブドラマを撮ろうとしているテレビクルーのドタバタ劇で、太田が演じるのは売れっ⼦だが性格の悪い役者・松田、碕が演じるのは実力はあるけど癇癪持ちの監督・藤原。磯貝曰く「将熙くんも、碕くんも、愛される役ばかり演じてきましたが、喜んでください。今回は確実に愛されません!(笑)」という役柄だ。そんな役について太田が「松田はライバルを蹴落として今の地位を獲得した役者で、一見汚いヤツだと思うのですが、実際はみんなそうだよね?上にいきたいよね?とも思うし、僕自身すごく共感できました」と明かすと、磯貝は「僕が役者として普段思っていることを書いた役です。と言うと性格悪いけど(笑)」と告白。リアリティのある人物になりそうだ。碕は「藤原は、自分がやりたいことにこだわりすぎて嫌われてしまうような人物。でも、誰しも心の中にはやってみたいことってあると思うんですよね。それを我慢するか我慢しないかはそれぞれだけど、藤原は我慢しなかった。そのせいでとんでもないことが起こるのですが、我慢していたら生まれなかったものもあると思いました。お客さんには嫌われるかもしれないけど、『わかる!』という方もいるかもしれない。そこにワクワクしています」。

長く役者として活動し、ここ数年は演出家・脚本家としても活躍を見せる磯貝。初タッグとなる太田は「作・演出家として毎回型破りなことをされている印象があるのですが、それを続けていけるのは実力があるからこそ。そういう方とご一緒できるのは非常に光栄です」と期待をし、役者として磯貝と何度も共演してきた碕は「⿓乎さんは普通じゃ考えられない発想をされる方。演出をいつか受けてみたいと思っていました。⿓乎さんの想像を超えていけるようにがんばりたいです」と嬉しそう。<新しい試み×磯貝の発想>からどんなものが生まれるか楽しみだ。

劇場は撮影現場。一歩入った瞬間からその世界が始まるという『Another lenz』は、5月15日(土)から23日(日)まで東京・新宿FACEにて。

文:中川實穗