撮影:小田島万里

東北を中心に活動する劇団 短距離男道ミサイルによる『みちのく超人伝説「北天鬼神譚アクロオー阿弖流爲Z」Episode Final さらば愛しき人よ』が2021年5月27日から宮城・せんだい演劇工房10-BOX box-1で上演される。

劇団 短距離男道ミサイルは、東日本大震災直後の2011年4月に「仙台、東北、そして日本を笑顔にしたい」「なにか自分たちにできることはないだろうか」という想いのもと、仙台の若手男優によって結成された劇団。本作は、同劇団の「36発目」の作品となる。

舞台は、核戦争が勃発した西暦700年代の東北。みちのくのヒーローである阿弖流爲(あてるい)がその戦禍に巻き込まれながらも、敵対するはずの相手と友情を築き、東北で生きる術を見い出そうとするストーリー。ちなみにタイトルに「Episode Final」とあるが、作・演出を務める本田椋によれば「スター・ウォーズのような展開を考えていて、本作は1作目」とのことだ。

開幕前の5月5日、オンライン上で配信された製作発表会見と公開稽古を見た。

会見で、本田は本作に込めた想いについて「劇団結成10周年、震災から10年目。みなさんに喜んでいただけるようなエンターテイメント作品を作りたい、そして、豊かな伝統芸能や文化がある東北に根ざした作品を作りたいという思いがあった」と語る。現在のコロナ禍との状況も絡め、「震災の時とある種近いような、息苦しい空気感を感じているが、そんな中だからこそ、阿弖流爲というヒーローに会いにきてくれたら。皆さんの背中を押せるように、一生懸命、作品を作っている。ぜひご期待いただきたい」と話していた。

約20分間、行われた公開稽古。正直で冷静な感想を言えば「大の大人がバカなことをやっている」と思う。でも、きっと、それがいい。彼らが一生懸命に汗水流しながら役を演じ、観客はそれを生で見て、何も考えずにげらげらと笑う。それが劇団 短距離男道ミサイルらしさなのだろう。現に、同劇団員の武長慧介は「劇場で見て楽しいと思える作品を作りたい。映像で見ていても伝わらないもの、観客と一緒に楽しめるものを作りたい」と話しているし、同じく劇団員の小濱昭博は「旗揚げ公演を見たときに、震災の1ヶ月後だったけれど、周りの観客と一緒に笑った。そこで気づけた感動と幸せがあった」と振り返っている。

劇団10周年という節目の年。これから10年後をどう考えるかという質問に、劇団員の武者匠は「演劇界に革命を起こす」、小濱は「劇団員が1000人」、本田は「みちのく文学堂に改名して、服は脱がない」、武長は「世界ツアーを開催」と、それぞれが大きな夢を描いている。

公演は6月7日までの全16公演。出演は、小濱、武長、武者、本田のほか、斎藤拓海、神﨑祐輝、三澤一弥。一般前売3500円、学生前売2500円。チケット発売中。
※写真は、撮影のためマスクを外しています。

取材・文:五月女菜穂