時間がないけどお腹はすく。美味しいつまみをつくりたい。家飲みのとき、ちょっと受けを狙いたい。休みの日は楽しく、面白く料理をしたい!そんな人のための、料理道具をリサーチ。

実験しちゃいます。キッチンツールはもはやブーム。今は、こんなものまで?と思うほど、意外なキッチンガジェットが数多く登場しているのです。

  

今回試してみたのはこの不思議なもの。話題のシリコン製料理道具です。

  

 ころんとしたボウルのような、見ているだけで不安定なかたちですが、切り込みを使って、くるんと巻いて使います。これは、スペインのルクエという会社から発売された「スチームロースター」(3,990円)です。

これ、電子レンジで魚を焼き魚風に仕上げられるという驚異の道具。専門書まで出ているのです。

<セブンネットショッピングでレシピ本を探す>

今日は焼き魚で日本酒。せっかくそんな気分で魚を買って帰ったのに、コンロのグリルを引き出してビックリ。前に使ったまま、洗ってない! 中は油がべとべとのコビコビ、意外とよくある光景ですね。そんな時にこれがあれば、魚を入れてチンすればいいのです。…と、シリコンって熱すると、溶けるんじゃないの? それゴムと間違えてるから!

 シリコンは鉱物生まれの耐熱容器。200°程度の熱に耐えて、オーブンで焼いちゃってもオッケーなのです。シリコン製のケーキの焼き型があるほど。

さて、今日試してみるのは、スーパーで買って来た激安の鯵。釣り好きのダンナにワタをとってもらいましょう。「ぜいご」なんて取ると、とたんにプロっぽくなります。

 キッチンペーパーで全体の水分をしっかりと拭き取る。後から思えばこれが意外と重要な調理工程でした。その後、全体にちょっと多いかな、と思うくらいしっかりと塩をまぶします。ちょっとうらめしそう。

 商品に付いていたレシピ通りに500Wで3分加熱。レンジの中で、プチプチ…ポーン!と弾ける音が。「爆発して、魚が全部バラバラになってたりして」。ダンナの不吉な予言は聞こえないふり…。調理完了!

 その後、1分そのままにして余熱で熱を通します。

  

 開くと、こんな感じです。

  

 いわゆる火の焦げ目とは違う、薄いフィルム状のぱりっと感。フワパリっという感じの皮の下から現れたのは、蒸すとも焼くとも違う、旨みいっぱいの魚の身。「普通の焼き魚なら遠赤外線って感じだけど、こっちは分子振動って感じだね」とダンナ。確かに焼き魚とは違う。でも、いや、これはこれでジューシーな鯵ですよ!

  

 いずれにせよ、レンジ魚という感じで、焼き魚にヒントを得た、新しい料理と表現するのが正しいかも。単なるレンジ蒸しとも違うのですよね。それは表面の皮がパリっとするから。そこが妙味の新食感と言えましょう。

 ポイントは水分の残し具合かと思います。レンジの加熱が中途半端だとぬるっとしてしまう。できれば600W以上の高加熱で様子をみながら、パーンと加熱させたいです。事前に水分をきちんと拭き取っておく。この辺も皮のパリパリ感を左右しそう。

実は私たちは2尾目は1000W2分でレンジに掛けてみましたが、皮の張りがよりぱりぱりして、ジュージューしましたので、対応できるレンジであれば、出力を変えて好みの加減にしても。

 もともとこのシリコンの調理道具は、そのねっとりした素材感を活かして、封

のように食材を包んで密封。レンジで加熱する「スチームケース」が大ヒット。このルクエ社の商品を追随して、今は競合商品がたくさん出ています。そこで新製品は、密封とは逆の発想で、少しだけ口を開けて、水分を飛ばす。けれどもレンジでしっかり食材の中まで熱を通す。この加減をうまく使えれば、いろいろなメニューができそうです。

レシピブックには「ローストビーフ」「海老の鉄板焼き風」「手羽先のグリル」など、ワインに合いそうな献立も載っています。

単なるアイディア商品じゃなくて、スペインのブランドもので、ちゃんとプロダクトデザインは、デザインユニットCOMPEIXALAIGUA によるもの。その辺もポイント高めじゃないですか!

ほんま・みき キッチン、インテリア、デザインに関する執筆、企画、編集を手がけるエディター&ライター。食と暮らしを結ぶ具体的なもの、こと、考え方の取材が特に得意分野で、キッチンジャーナリストとしても活動中。独立前は老舗系インテリア専門誌の編集部に勤務。床壁、家具から雑貨まで住まい関わるものはすべて取材経験あり。手がけた本に「ザ・リアルキッチンガイド」「マイスタイルキッチン」「インターナショナルキッチンAtoZ 」「リノベーション物件に住もう!~超中古主義のすすめ」など。ブログ「キッチンのこころ