「飼い猫がいます。
猫って、たまに何もないところを見つめているとか暗い床を掘るとか、変な行動があるじゃないですか?
うちの子もそういうところがあって、“猫あるあるだな”くらいにしか思っていませんでした。
ある夏の日、昼寝していて起きたらもう夕方で、部屋が薄暗くなっていました。
電気を点けようとベッドから降りたら、玄関のほうでうちの子の鳴き声がして。
『あれ、普段は玄関なんか行かないのに、どうしたのかな』
と思って名前を呼んだら、もう一度『にゃーん』と返ってきたけど声の調子は普通で特に何とも思わず、壁にある電気のスイッチを押しました。
すると、部屋の隅に置いてあるクッションに丸くなっているうちの子。
くうくうと穏やかな顔で寝ていて、かわいいなと思った瞬間“じゃあ玄関で鳴いたのは誰!?”と慌てて向かいました。
玄関には誰もおらず、猫の姿もなく、でもあの声は絶対にこの子だった、私は確かにこの子の名前を呼んでその返事があった、と頭をめぐった瞬間に鳥肌が立ちました。
『もしこの子の寿命が近いとかそんなお告げだったらどうしよう』
と不安でしたが、結局それから何事もなく、飼い猫は今も元気です。
友人には寝ぼけていたんでしょと言われましたが、薄暗い部屋のなかであの子の声を聞いたのははっきり意識に残っていて、今も思い出すと怖いですね」(38歳/公務員)
そこにいるはずのない飼い猫の鳴き声。
寝ぼけていても名前を口にして返事があったことは事実で、人間のいたずらとも思えません。
「誰がそこにいたのか」は永遠の謎ですが、こんなタイミングで起こると不吉な知らせを想像します。
夕暮れのようは“彼は誰時“は、曖昧な空間が恐怖を呼びます。