photo Yuji Namba

ローザンヌを拠点に活動するモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)が、10月に日本公演を行う。4年ぶりの日本ツアーを前に開催された記者会見で、ジル・ロマン芸術監督が公演への熱い思いを語った。

開口一番、「今回、世界バレエフェスティバルで観客と素晴らしい時間を分かち合えたことに感謝したい」とロマン。彼自身が会見前日まで出演していた舞台のことだが、3年に一度、世界各国のトップダンサーを招いて開かれる大規模公演ゆえに、コロナ禍での開催は危ぶまれた。今回のBBL日本公演も、本来であれば昨年5月の予定が、来日叶わず9月に延期、それもその後再延期に。「今度こそはと、準備を進めています」とロマンは前を見据える。
予定されるプログラムは2つ。前半では、彼の近作『人はいつでも夢想する』が登場する。「ジョン・ゾーンの音楽が好きで、ニューヨークの彼を訪ねました。その時ちょっとしたソロを踊って見せたのですが、彼はそれを気に入ってくれた。そこで信頼関係が生まれ、2年かけて作品を完成させました」。レパートリーの柱である巨匠ベジャール(1927〜2007)による2作──人気作『ブレルとバルバラ』と不朽の名作『ボレロ』の上演も注目される。
後半の日程の演目は、日本でもたびたび上演され話題となったベジャール振付『バレエ・フォー・ライフ』。クイーンの音楽でダンサーたちがパワー漲るパフォーマンスを展開するこの傑作を、ロマンは「この困難な時代だからこそ、強く訴えかけるものがある」と紹介。「ベジャールがテーマに据えたのは、若くして亡くなった人たちへの思いです。45歳で没した(BBL伝説的ダンサーの)ジョルジュ・ドン、クイーンのフレディ・マーキュリー、そしてモーツァルトも早逝した。作品のテーマはとても重い。それは人生に対する戦いでもある。この非常に困難な状況下で、その意味はさらに大きくなる」。
本公演は、文化庁子供文化芸術活動支援事業として全日程で18歳以下を対象とした無招待席(合計3253席)が設けられるが、「子供たちの想像力を掻き立てる舞台になれば」とロマン。「彼らは私たちの未来。世界を築いていくのは彼らだから」と笑顔を見せた。
『ボレロ』『人はいつでも夢想する』『ブレルとバルバラ』は10月9日(土)〜11日(月)、『バレエ・フォー・ライフ』は10月14日(木)〜17日(日)の上演。会場は東京文化会館、チケットは発売中。

文:加藤智子