「試練に立ち向かう」というアティテュード

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圧巻は、まさかのおやじダンサーズが登場した『行くぜっ!怪盗少女』。中年おやじたちがたまアリのセンターステージで踊りまくるさまは、ちょっとした地獄絵図……! ライブのクライマックスとも言えるタイミングでこの大ネタ投下は、ライブの盛り上がりを削ぐ可能性も十分にあり、相当リスクも高かったはず。自分はあまりの衝撃に驚くヒマもなくただただ爆笑するのみでしたが、「♪レニカナコ~シオリアヤカモモカ」のコールアンドレスポンスで途切れかけたライブのグルーヴをつなぎとめ、大サビの本人登場で爆発させる流れは見事でした! あれはモノノフたちを信頼していないとできない演出だったと思います。そんな衝撃演出で盛り上がった観客は、その後登場した松崎しげる氏の熱唱でさらなるカオスへと突入していくのでした……。
 

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さて、もうご存じの方も多いと思いますが、この日のライブでは冒頭(1曲目が始まるより前)から「南国ピーナッツ」なる謎の敵役がたびたび登場し、ももクロのライブを妨害するという演出がありました(初日でも同様の演出があったそう)。つまり観客は<ももいろクローバーZ 対 ライブを邪魔する悪役>という対立構造を、ライブ本編前に確認することになります。

マネージャー川上アキラ氏に代表される「大人たち」からさまざまな試練を与えられ、それをクリアすることで成長し、新たな試練へと立ち向かっていく――ももクロは常になにかと戦い続けてきました(それこそどんな時も一生懸命に、全力で)。その戦う相手がこの日は南国ピーナッツだったわけで、ライブ中にも対決シーンなどの演出が多く盛り込まれていました。こうした「試練に立ち向かう」というアティテュードは、ももクロの特徴のひとつです。
 

 
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歴史を重ねる中で生まれた喜びや苦しみをともに分かち合うことで、アイドルとファンの間に“物語”が生まれます(ももクロの歴史を紹介した記事はこちら→ ももクロ、夢の紅白間近!?ライブ聖地巡礼で振り返る激動の5年史 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/10364 ] )。ももクロはそこに「試練に立ち向かう」という要素をプラスすることで、より意識的にファン=モノノフとの絆を強く結びつける物語を紡いできたように思います。今回のライブでは、「南国ピーナッツとの戦い」という別軸を設けライブ本編とリンクさせることで、ももクロならではのエンタテインメント・ショーを作り上げていました。

その意味で、ももクロにとって最大の試練だった『紅白歌合戦』でのパフォーマンスは、ももクロとモノノフの間で共有されてきた物語のひとつの極点だったと思います。同時に紅白の舞台は、ももクロの物語を共有していない“その他大勢の人々”に向けて、過去最大規模のスケールでももクロの今を伝えることができた、とても貴重な機会にもなったのではないでしょうか。

さて、ももクリの圧倒的なステージに興奮しながら、自分は冒頭の問いに答えを見出せないでいました。「いつも一生懸命で全力」という言葉では表現できない、自分にとってのももいろクローバーZの魅力とはなんなのか。常に目の前の敵や試練に挑み、戦い続ける姿勢に惹かれるのか。それとも紅白の先へと向かう物語に魅せられているのか……。ライブはアンコール『ももクロのニッポン万歳!』で、見事な大団円を迎えました。