拡大画像表示 明治期に制作されたきせる(羅宇きせる)

その絶頂期のきせるたるや、本当に眺めていてもウットリするような物が多く、正に日本の職人技を手近に感じられる絶好のアイテムです。現代の西洋式のパイプが、木工芸術とも言える喫煙具であるのに対して、絶頂期のキセルは彫金・象嵌・金工芸術の粋とも言える芸術性を備えています。江戸時代までの日本刀の芸術性が、明治期のきせるにも宿っているという見方もできる訳です。

なるほど、海外にも日本のきせるのファンがいらっしゃるのも頷けます(http://www.sarudama.com/miscellaneous/kiseru.shtml)。このサイトからは、偶然の入手から、信頼できる販売店の確保まで実に2年間にわたる記録がみてとれます。また私自身も、そうしたきせるの魅力にはまり、オークションサイトで昔の銘品を物色する事が良くあります。もちろん、持っているきせるは実際に喫煙で使用します。

「咲分ケ(さきわけ)言葉の花 おかみさん」 喜多川歌麿(享和ころ)
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きせる喫煙というのは、長くても数分で終わるショート・スモークです。正に「一服入れる」喫煙です。この辺は、一回の喫煙に1時間から2時間程度を要するパイプ喫煙や、本格的なサイズでは1本吸うのに30分以上はかかる葉巻とは大きく異なる部分です。日本人は、このショート・スモークのスタイルを何百年も続けてきた訳です。だからこそ、同じくショート・スモークで、より簡易な喫煙方法である紙巻煙草が日本に登場すると、スムーズに主役の座が紙巻煙草に移っていったのでしょう。現代日本で主流となっている紙巻煙草によるショート・スモークの喫煙スタイルは、きせるによって既に江戸時代に確立されていたとも言えます。

皆さんもチャンスがあったら、素晴らしいきせるの世界を覗いてみてはいかがでしょう。そこでは、現代日本へと繋がる文化の断片を垣間見る事ができます。

資料提供:たばこと塩の博物館
[http://www.jti.co.jp/Culture/museum/about/index.html]