漠然とした疲れや不安を感じるときこそ、惰性の毎日をリセット、リフレッシュするためにおすすめしたいのが「修行体験」。今回は、姿勢を正して呼吸と心を整えることで悟りをめざす禅の基本的な修業「坐禅」にまつわる文化や背景、その作法についてまとめました。
姿勢を正し呼吸、心を整える
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「日常の行いのすべてが修行」と考える禅では、食事に睡眠、とにかく日々の営みすべてが修行の場。人が普段規範とする善悪や倫理観も、それにとらわれることは悟りを遠ざける“煩悩”となる。
禅において、不安に不満、悲しみ、怒りなど様々な感情、いわば“煩悩”に振り回されがちな日常生活で、穏やかな心を保つために有効とされるのが、坐禅。修行体験というとまずこの坐禅を思い浮かべる人も多いのでは。
その基本は、正しい姿勢をつくり(調身)、呼吸を整え(調息)、心を整えること(調心)。宗派で意味や取り組み方に違いはあるが、いずれも悟りに近づくための大切な修行である。
とはいえ、仏教寺院であればどこでも坐禅をしているわけではない。すべての修行体験にいえることだが、修行や修法によってはできるところとできないところがあるので、体験を希望する場合は事前に寺院や宿坊に確認しよう。
坐禅を行う宗派は?
鎌倉時代に隆盛を極めた臨済宗、曹洞宗、江戸時代に興った黄檗宗。日本では一般にこの3宗派を「坐禅を行う宗派」といった意味で「禅宗」と呼んでいる。明治期には鈴木大拙らの活動により、「ZEN」として世界に広まっていった。
しかし、坐禅ひとつとってみても、作法や目的など各派で異なる点は少なくない。そんな各派の特徴は上の表にもあるが、次のとおり。
まず、14の宗派に分かれ、それぞれに大本山を有するのが臨済宗だ。室町期から鎌倉期にかけて栄華を誇った「京都五山」「鎌倉五山」の主要寺院と、戦国時代に武士の支持を得て勢力を伸ばした「林下」と呼ばれる大徳寺と妙心寺などが大本山となっている。一方、曹洞宗の大本山は1615年より宗祖道元の開いた永平寺と總持寺と定められた。
江戸時代の禅界に大きな影響を与えた黄檗宗は、隠元の開創以降、明代の儀式作法を守り続ける萬福寺が大本山。禅のみならず隠元の伝えた食材など日本に融けこんだものは多い。