歌舞伎俳優・市川染五郎が2月4日、東京・日生劇場で行われた『二月大歌舞伎』で舞台復帰を果たした。
染五郎は、昨年8月に行われた舞踊公演中にセリから転落し、右手首を骨折する大けがを負ったがその後奇跡的に回復。約5か月ぶりに舞台に立った。染五郎復帰に際し父・松本幸四郎は、幕開きの「口上」で次のように語った。「当月はまたひとしおの思いがござりまする。長らく舞台を遠ざかっておりました、せがれ市川染五郎がおかげさまで怪我も全快いたし、その復帰の舞台がこの二月大歌舞伎となりました。染五郎休演の節にはみなさまにはご心配をおかけしましたこと、父として誠に申し訳なく、ここに改めてお詫びを申し上げる次第でございます。染五郎もなお一層精進をいたし、一生懸命歌舞伎の勉強をする所存と聞いております。みなさま方には以前にもまして、市川染五郎をご贔屓、ご指導くださいますよう、ひとえによろしくお願い申し上げます」。
幸四郎の「口上」に続き、『義経千本桜 吉野山』で佐藤忠信を演じる染五郎が花道のセリ(すっぽん)から登場すると、「高麗屋」の掛け声とともにひときわ大きな拍手が沸き起こった。染五郎は中村福助の静御前を相手に流麗な舞いを披露、観客は様式美あふれる歌舞伎舞踊の名作を堪能していた。
ふたつ目の演目『通し狂言 新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)』(通称『魚屋宗五郎』)では、幸四郎と染五郎の父子が共演。この作品は、妹を殺された宗五郎が禁酒の誓いを破って酒を飲み、泥酔したまま妹を殺した殿様の屋敷に乗り込む『魚屋宗五郎』の場面のみ上演されることが多いが、今月は「弁天堂・お蔦部屋・お蔦殺し」とあわせて通しで上演する。幸四郎は宗五郎を、福助は妹で殿様の愛妾お蔦と宗五郎の女房おはまの2役を、そして染五郎が屋敷の殿様・磯部主計之助を演じる。
公演は2月26日(火)まで。東京・日生劇場にて。チケットは発売中。