市川染五郎 (撮影:星野洋介) 市川染五郎 (撮影:星野洋介)

昨年夏に舞踊会の事故で大怪我を負って以来、東京・日生劇場での「二月大歌舞伎」(2月4日から26日)で久々に本格復帰した歌舞伎俳優の市川染五郎。昨年から今年にかけては相次いで大看板を失うという悲報が続いた歌舞伎界だが、次代の歌舞伎を担う世代としてますます大きな役割を果たしていくことは間違いない。2月某日、染五郎にインタビューした。

新橋演舞場「花形歌舞伎」チケット情報

約半年ぶりの舞台に立った感慨について訊くと「正直言って……うれしかったですね。そんなことではいけないとは思いつつ、うっかりすると感動しそうになってしまって。ものすごく緊張したんですが、お客さまが温かく迎えてくださったのがとにかくありがたかったです」と答える。

復帰したばかりとはいえ、来月以降もさっそく歌舞伎公演が続く。3月は東京・新橋演舞場の「花形歌舞伎」で『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』の一條大蔵卿、舞踊劇『二人椀久』の久兵衛と、ともに初役で大役を勤める。「大蔵卿は叔父(中村吉右衛門)に教えていただきます。念願の大きな役のひとつなので、これをやらせていただけるのは本当にうれしいし、ありがたいです。阿呆のふりをしていた大蔵卿が実は……という芝居で、心理劇として観ていただいたら面白いと思います」。

『二人椀久』は尾上菊之助と踊る。故・中村富十郎と故・中村雀右衛門の当たり役だが、ふたりの晩年に近い舞台を菊之助とたまたま同じ日に観たとき、「一緒にやろうね」と話したと言う。「曲も、踊りも、たたずまいも、すべてに独特の世界観がある素晴らしい作品なので、彼とこうして実現できるというのがとてもうれしいですね」。

来月の目標については「『一條大蔵譚』は叔父がやっていたものを私が受け継ぎたいですし、『二人椀久』は天王寺屋のおじさん(富十郎)がやられていたものを自分の身体で再現したいです」と意欲を見せる。

次代の歌舞伎を担う染五郎の活躍に期待したい。なお、インタビューの全文はチケットぴあ「今週のこの人」コーナーに掲載。

新橋演舞場「花形歌舞伎」は3月2日(土)から26日(火)まで。チケットは発売中。

取材:市川安紀