笑福亭鶴瓶 笑福亭鶴瓶

笑福亭鶴瓶が2時間に渡ってしゃべり倒す『鶴瓶噺』。漫談ともスタンダップコメディーとも異なる独自の話芸だが、今回は記念すべき20周年を迎える。だが、節目の年にもかかわらず、鶴瓶本人にもスタッフにも気負いはない。あくまで自然体だ。まるで息をするかのごとく、笑いをうむプロフェッショナルに、しゃべりの現場=ラジオ局で話を聞いた。

TSURUBE BANASHI 2013(鶴瓶噺) チケット情報

鶴瓶のインタビューは、いつだって鮮度がいい。「昨日な」「この間も」と、まさに鶴瓶噺の舞台で聞けるようなエピソードが突然に飛び出すからだ。「この間ね、みんなでトンソクを食べてたんですよ。関西ではテビチって言うんですけど、店に入って2時間ぐらいたった頃かなぁ。弟子が『師匠、なんかついてます!』と叫ぶんです。ジーンズのファスナーがあるあたりを指さしてビックリしたような顔でね。なんやろと思ったらテビチの骨やったんです。なぜ、テビチの骨が大事なところにつくねんと。気持ち悪いから、弟子に『取ってくれ』と頼んだら『嫌です!』と断られました(笑)」

鶴瓶噺とは、ドキュメント芸でもある。「本当にあったことが一番おもしろい」と語る鶴瓶は、本来ならば師匠の言葉に従わべき弟子の「嫌です!」すら、笑い飛ばす。

それにしても、このお笑い打率の高さはなんなのか。鶴瓶噺は、5日間の公演で話す内容が日替わりというバリエーションの豊富さを誇り続けてもいる。なぜ、笑福亭鶴瓶は、日々おもしろい出来事と遭遇するのか。同業者の言葉をひきあいに、本人が自己分析をしてくれた。「タモリさんには、心を開きすぎやと言われたことがあるんですけどね(笑)。『あんたは初めて会う人でも、自分から目を合わしにいくでしょ? ふつうの人なら心を閉じる場面でも、常に開きっぱなしだから、相手も心を開くんだよ』って。あとね、別の人からですけど、『笑ってはいけない場面で笑ってしまったり、ちゃんとした大人だったらしてはいけないことをしてしまうことがあるでしょ?』と指摘されたこともあるんです。たしかになぁ、そういうとこあるなぁとは自分でも思いますね。この間もね、ある人のお葬式で言うてはいけないことを言ってしまって、えっらい怒られましたから(笑)」。

弟子にあるまじき言葉も、大御所にもかかわらず自分が怒られたことも、笑いに変換する鶴瓶噺。その間口の広さと度量の大きさが、笑福亭鶴瓶という芸人の魅力なのかもしれない。そして、もうひとつ。鶴瓶噺に一般的な意味でのタブーはないが、「人を傷つける笑いはほしくないですね」と語る優しさが同居している点も見逃せない。祝20年な鶴瓶噺。すでに今回の基本構成はできており、絞られたエピソード項目は、652を数えるほどだという。

TSURUBE BANASHI 2013(鶴瓶噺)は、4月17日(水)から21日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて。チケットの一般発売は3月9日(土)午前10時より。なお、チケットぴあではインターネット先行抽選「プレリザーブ」を実施中。2月28日(木)午前11時まで受付。

取材・文:唐澤和也