舞台、映像、ラジオ出演のほか、メンバーそれぞれに脚本・監督・演出を務めるなど個々にマルチな活躍を見せるヨーロッパ企画。2020年に公開した映画『ドロステのはてで僕ら』は、現在も世界各地の映画祭でさまざまな賞を獲得するなど注目を集めている。そんな彼らが、2年ぶりに本公演を開催。12月18日(金)より、新作『九十九龍城(きゅうじゅうくーろんじょう)』で全国11都市を巡演する。公演に向けて、作・演出の上田誠をはじめ、劇団メンバーと客演の早織が取材会で意気込みを語った。

ヨーロッパ企画第40回公演「九十九龍城」チケット情報

「僕らにとって、本公演は特別なもの。稽古初日に客演の方含め全員で集まったときは、感慨がありました」と上田。今作では、かつて香港に建っていた違法建築物の魔窟「クーロン城」をモチーフに「その11倍すごい九十九龍城を描きます」と語る。舞台には、九十九龍城に住まう人たちと、ふたりの刑事が登場。香港を巻き込むとある事件が起こり、犯人の情報が九十九龍城の中にあるかもしれないという情報をもとに、刑事たちが捜査していく…。

「無法地帯だったクーロン城は、よっぽどのことがない限り警察が介入することがなかった場所。九十九龍城も、刑事たちが実際に入り込んで素性がバレるとどうなるか分からないというので、あるシステムを使って、九十九龍城の中を順番に覗いていきます。そこでは、イリーガルだったり、グレーなことがまかり通っていて、刑事たちがその中のある事件にのめり込んでいきます。それを観ていくこと自体が今回の劇の醍醐味。久しぶりの劇団公演なので、劇団の“トライブ感”を楽しんでいただければと思います」(上田)。

入り組んだ空間で多くの人がうごめくのも魔窟劇のポイント。劇団員の諏訪雅からは「キャストが足りない」という悩みが出るも、永野は「密度感を表現しなければならない。僕は自ら上田君にめちゃくちゃたくさん役をやるよと伝えました。ひとりピラニア軍団として、死んでは生まれ変わって、というのをやっていきたい!」と熱く意気込みを語る。実際、刑事役の中川晴樹、金丸慎太郎以外のキャストが、複数役を担当。「マフィア、住人、工場主、工場の工員など、それぞれが演じます。2006年に上演した『Windows5000』のように、部屋の一つひとつを覗いていく面白さが作れたらと思っています」と上田。

香港映画なども参考に「なんちゃってアクション」も取り入れながらハードボイルドに描く。「いろんな人間同士の関係性で、結構激しい動きだったり、そんなところに乗るのかとかは劇中で行われます。あくまでもコメディなので、笑いの中での面白い動きだったり、空中性のある舞台でもあるので、アクションにも期待していただけたらと思います」(上田)。

公演は、12月18日(土)滋賀・栗東芸術文化会館さきら中ホールでのプレビュー公演を皮切りに、京都、東京、広島、福岡、愛知、富山、高知、愛媛、大阪、神奈川を巡演。チケット発売中。

取材・文:黒石悦子

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