立川志の輔に入門し、二ツ目になってから今年で10年。真打昇進を期待される立川志の吉が、いよいよ大きなアクションを起こす。3月から6月まで計4回にわたって開催する“立川志の吉「しめせ!」独演会”がそれだ。なぜ、何を、どのように、披露するのか。本人を直撃した。
真打になれるかどうかは、落語立川流の場合、師匠の判断次第。つまり、志の輔がゴーサインを出さない限り、志の吉の真打昇進は実現しない。「力量があれば認めるということなんですが、何をどうしろという具体的な指示はありません。言われたのは“しめせ!”のひとことでした」。これまで4か所で定期独演会を開き、立川流の真打昇進の条件とされる落語100席と歌舞音曲は習得した。そして、今このタイミングで、何をどうしめせばいいのか。志の吉は一番弟子。前例はない。「悩んでいたところ、師匠から“お前とは何ぞや?”と言われまして、その時に“現状の自分を背伸びすることなく表現しよう!”と思ったんです。悩んでいる暇はない。それを自分なりに考え、自分なりに消化する作業の先に答えはあると」。
そして独演会のテーマとして選んだのが、〈修業編(前座・二ツ目の修業)〉、〈子ども編(教育)〉、〈ビジネス編(商売)〉、〈ブライダル編(結婚)〉の4つ。修行編以外の3つは、志の吉が気付くと周りから求められてきたものだ。落語をやりながら「子供の想像力に驚き(教育)、うまくいかないのが商売と気付かされ(商売)、結ばれる運命は自分で結ぶものと感じた(結婚)」という。志の吉によって、現代生活で落語がどう応用できるのか、独特の切り口に期待したい。「しめすのは舞台だけではありません」。選んだ会場は新宿明治安田生命ホール。そこは師匠が10年間独演会を続けてきた場所だ。さらにチラシも自ら動きスポンサーを獲得した。数ある落語会のチラシの中でインパクトは絶大だ。
立川流家元・立川談志から志の輔へ、そして師匠・志の輔から志の吉へ。受け継がれるDNA、それは「闘い続けること」だと志の吉は言う。「師匠はトップに上りつめてもいまだ全力疾走しているし、家元も亡くなる寸前まで落語のことを考えていた。死んだ今でも考えていると思います」。「まったくえらいところに入門しました」と笑いながらも、「マネをしていてはダメ。独自の色がなければ」と気は緩めない。だからこそ、“しめせ!”と言われたオリジナリティ。志の吉の未来は、そこから始まる。
東京・新宿明治安田生命ホールにて、3月21日(木)に〈修業編(前座・二ツ目の修業)〉、4月24日(水)に〈子ども編(教育)〉、5月22日(水)に〈ビジネス編(商売)〉、6月19日(水)に〈ブライダル編(結婚)〉を開催。チケット発売中。