12月2日(木)より、東京・上野の森美術館で、深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」が開催される。苦境のなかでふと目に入った金魚の美しさに魅了され、金魚絵を描き始めたという深堀氏。試行錯誤の末、透明樹脂を流し込み、アクリル絵の具で金魚を描く作業を繰り返し、立体的かつ写実的な金魚を描く技法を生み出した。いまにも動き出しそうな、生き生きとしたリアルな金魚絵。いまやそのファンは全国に存在する。

開催を控え、内覧会が行われた昨日、深堀氏はライブペインティングを披露。ゲストには、芸能界きっての金魚マニアであるというタレントの照英氏と、近年メディアに引っ張りだこの人気芸人・ヒコロヒー氏を迎えた。深堀氏は、二人と軽快なトークを繰り広げながら、よどみなく筆をすべらせていく。「平等院鳳凰堂」「害獣」といった、二人の出す個性的なお題に次々と答えながら瞬時に絵を完成させていく深堀氏に、ゲストの二人も驚愕。絵を描くときは、「結局楽しんでいる」と話す深堀氏。描いた絵に新たな絵を重ね、水鉄砲を使って色をなじませるなど、独特な技法を披露した。

そうして出来上がったのは、キャンバスを大胆にはみ出して尾ひれを優雅にひるがえす、一匹の金魚だった。これにはゲストの二人だけでなく、会場のメディアも拍手喝采。明日から始まる展示では、この作品と一緒に写真撮影も楽しめるという。

自身の描く金魚絵について、深堀氏はこう語る。

「僕と金魚とを隔てる水面。樹脂を何層にも流し込んで金魚の体を描き足しているうちに、徐々に僕の手から金魚が離れていくような、不思議な感覚があります。絵が完成すると、水面を境に、空気の中で生きる僕から、水中という生の世界に金魚が放たれ、まるで動き出すかのように見えるんです。リアルとは何か。これからも追及していきたいし、この技法が何十年、何百年も誰かに受け継がれて進化していくものであってほしいなと思っています」

展覧会では、深堀氏の名を世に知らしめた金魚の立体作品はもちろん、巨大なキャンバスに描かれたダイナミックなアクリル画や、今年の新作であるインスタレーション作品も展示。新しい技法を生んだ過程での試行錯誤も垣間見られる展示となっている。

今年で活動20年目を迎えた深堀氏の軌跡。彼の作品を一目見た瞬間の感動を、この大規模展覧会でとくと味わってみてほしい。

取材・文/飯塚さき