なんでも「エモい」でまとめてしまうと、言葉が平坦になってしまう

――アクマデの曲は、感傷的な恋愛を描くことが多いですよね。現在の作風に行き着いたのはなぜなんでしょうか。

ゆうり:アクマデは、愛を表現するプロジェクトなんです。僕って生活の一部として曲を切り取っているみたいなところがあって。僕、恋愛をめちゃめちゃする人で……、100%恋愛体質というか。それで、「恋愛」と「愛」って、違うものだなとずっと思っていて。

「愛」って、「これが愛」といえばいくらでも成立するけれど、まだ自分の中での答えが見つけられなくて。それに対する答えをずっと見つけたくて、歌詞を書いて曲にしているんです。

いろいろな愛の形があると思うので、「この曲の愛はこれだ」と、伝えていくようなプロジェクトとしてやりたかったというか。

――女性的な目線の歌詞も多いですね。それはひとつの物語として女性を主人公にして描いているのか、自分の恋愛観を落とし込んでいるのでしょうか?

ゆうり:曲によって違うことがありますし、両方入ってることもあります。ストーリーとして描いた曲にも、自分の性格が入ってるところもある、逆に自分のことをしか入ってないと曲もある。それは曲によりますね。

僕は性格がかなり女々しいこともあって、女性的な目線に立ちたいというか、代弁者になれたら、想いを曲の中で表現できたらと思っています。

――ちょっと依存的で病んだ恋愛観が「エモい」とされる感覚、近年漫画や映像作品でも流行していると感じるのですが、そのあたりは意識していますか?

ゆうり:これはikkiも同意見だと思うんですが、最近でいうと「ぴえん」のような、そういう直接的な言葉ではなくて、もっと抽象的な言葉で表現したい、それが僕の考える自分の歌詞の魅力のひとつかなと思うので。

ikki:それこそ、流行を意識していたら「ぴえん」や「推し」みたいな、もっと直接的なフレーズを入れますよね。なんでも「エモい」でまとめてしまうと、言葉が平坦になってしまう。

例えば、シーシャを「エモい」というのは違うと思うんですよ、「それはチルじゃない?」って(苦笑)。そういった現代の日本語における言葉の使い方の部分は気になっています。

そういう記号的な言葉よりは、そこに至るまでの感情が大事じゃないですか。それを歌うのが音楽というか。

ゆうり:直接的な言葉では、言えない気持ちを言葉にしたいなと思っています。

「明るいのに悲しい」みたいなギャップが、人の心を動かすと思う

――その繊細さは、サウンド面にも出ているように思います。一見ポップだけど悲しい歌詞だったり、一筋縄ではいかないというか。

ゆうり:ikkiが書いてる曲以外は、基本的に詞先行で書いています。正確には「サビ詞先行」というか。サビの歌詞とメロディが一緒に浮かんでくることが多いです。それを一旦ikkiに見てもらって……という作り方をしています。

ikki:たしかに、サウンドの面でいうと、飛び抜けて暗い曲はないですね。暗い曲は暗くちゃダメと思っていて、死んでしまいそうな歌詞に死んでしまいそうな音って合わないと思っていて。理由はなんなんだろう、でもそこは意識しています。

――極端なたとえですが、映画やドラマなどで「悲しいシーン」を表現するために、雨の中、泣きながらセリフで「悲しい」と言わせるような「わかりやすさ」に興ざめしていまう、みたいな話に近いですね。

ikki:それと似たようなものですね。明るいのに悲しいみたいなギャップが人の心を動かすと思うし、それと合わせて心にくる楽器のフレーズが入っているのが大事だと思っていますね。

あとは、音と歌詞とメロディーを差別化したいというか、もちろん、音も聴いてほしいですが、先に歌詞とメロディーから入って、そのストーリーを感じてほしいというか……。

ゆうり:アクマデの曲は2人で作っているけれど、音楽に関しては88%くらいikkiにまかせていて、だからこそ安心して自分は歌詞とメロディーを追求できるんです。