11月28日にオープンした「ビックカメラセレクト原宿店」は、顧客ターゲットを女子中高生や女子大生、訪日外国人観光客(インバウンド)に絞り、既存のビックカメラの売れ筋商品をセレクトして展示。約330m2というコンパクトな店舗に凝縮させた。化粧品・薬・日用品・おもちゃ・菓子など非家電が7割、家電が3割の商品構成にするなど、これまでにない実験的な要素を取り入れた新業態の1号店となる。
地域と顧客ニーズに合わせて品ぞろえを変化
オープンに駆け付けた取締役専務執行役員の安部徹経営企画本部長は「ひとつのチャレンジとして中高生の若い女性と、海外でビックカメラのブランドに馴染みのあるインバウンドを対象にした。お客様の反応を見ながら品揃えを変えていく」と語り、同店を2号店、3号店への発展につなげるための重要な実験店と位置付ける。
限られたスペースながらも大型店に引けを取らない豊富な品揃えの化粧品とあわせ、保湿ケアやドライヤー、カーラーなどの美容家電もセットで提案する。「関連する家電製品をセットで展示できるのはビックカメラならではの強み」と安部専務は、化粧品と家電製品のクロスマーチャンダイジングでドラッグストアとの違いを鮮明にする。ちなみに、「ビックカメラセレクト原宿店」がある竹下通りは、マツモトキヨシ、ウェルパーク、コクミンなどが並ぶドラッグストアの激戦地でもある。
仕入れ責任者で商品本部商品部の宮輝生部長も「オープン時の品揃えは、あくまでもこちら側で想定したもの。商品を置きながら状況や反応を見て変化させていく」と語り、市場や顧客ニーズに合わせて品揃えを柔軟に変えていく考えだ。
330m2というビックカメラにしては小さな店舗であることもポイント。1号店がうまく軌道に乗ればコンビニエンスストアのような小回りの利く都市部での隙間出店が可能になる。9月にオープンした「ビックカメラ京王調布店」のような、駅前再開発に合わせた大がかりな仕掛けを必要としない分、機敏な出店戦略がとれるようになるだろう。
10月12日に発表したビックカメラの2017年8月期の連結決算は、情報・通信系商品は低調だったものの、ゲームや医薬品・日用雑貨が大きく伸張し、売上高はほぼ前年並みだったが、経常利益・純利益は前年度を上回り、増収・経常増益だった。非家電商品の売り上げが総じて増加しており、新業態「ビックカメラセレクト」は、こうした状況を受けたものだ。
「家電を落ち込ませたくないが、人口が減るなか中長期的にみて大きな伸びは期待できない。ビックカメラは非家電は30数年前から扱っている。玩具や酒は25年以上の歴史があるので、引き出しはある」と安部専務は自信をみせる。
11月24日には愛知・日進市にオープンした大型商業施設「プライムツリー赤池」内に、同社初の玩具専門店「ビックトイズ」を出店するなど、「非家電」による新業態の店舗展開にチャレンジしている。(BCN・細田 立圭志)