撮影:源 賀津己

新撰組隊士・中島登が箱館戦争終結の後に静岡県・浜松で暮らした日々を描く『中島鉄砲火薬店』が、1月20日(木)から新国立劇場小劇場で開幕する。作・演出はミュージカル『刀剣乱舞』シリーズや舞台『幽☆遊☆白書』など、2.5次元舞台でヒットを生み出している伊藤栄之進。本作は2012年に劇団スーパー・エキセントリック・シアターの劇団員が立ち上げた「ブレーメンプロデュース」に書き下ろした作品で、今回が待望の再演だ。初日を前に熱気を帯びる稽古場を訪ねた。

舞台は明治時代の浜松。元新撰組隊士の中島登(唐橋充)は、後妻にヨネ(福永マリカ)を迎え、その妹ヨシ(市橋恵)と共に静かに暮らしていた。道場で剣術を教える生活も落ち着き、登は先妻との間に生まれた息子で、離れて暮らしていた登一郎(小西成弥)を呼び寄せる。そんなある日、かつての仲間・大島(栗原功平)が訪れ、元新撰組隊士たちが不審な死を遂げていると切り出す……。

スタジオに足を踏み入れると、稽古は登と登一郎が久しぶりの再会を果たすシーン。唐橋の飄々としつつも誠実さを醸し出すたたずまいは、登が多面的な人物であることを伝えるようだ。一方の小西も、初めは父親に鬱屈した思いを抱えるものの、次第に心を開いてゆく登一郎役にピッタリ。ところどころで見せる素直な表情が、登と登一郎が親子であることに説得力を持たせていた。

一方で、登をつけ狙う甘利(田村心)と内山(松井勇歩)のシーンは、笑いも取り入れてテンポ良く進む。登と土方歳三(高木トモユキ)の対話シーンも同様だが、新撰組の史実も多く語られ、観ているうちに幕末の志士たちの“その後”が浮かび上がってくる。薬売りの石田(飯野雅彦)を含むそんな骨太な男たちに対して、甘利たちの命で動く鶴太郎(松本寛也)と亀吉(大見拓土)兄弟は、農村出の少年たちの葛藤をストレートに表現。それも当時の現実のひとつだったのだろうと思わず見入ってしまった。

稽古の後半では、登と大島のやりとりや、甘利の父親との秘密など、次第にシビアなシーンが展開。歴史の転換期に自分の“道”を模索した男たちを等身大で描く……とはいえ、そこは伊藤演出のこと。シリアスな場面と共に笑いあり殺陣ありのメリハリあるストーリー運びに引き込まれているうち、取材の時間はあっという間に終了。1人ひとりの演者が丁寧に人物像を創り上げていく様子と和やかなチームワークが感じられる現場に、ますます本番が楽しみな稽古場見学となった。

取材・文/佐藤さくら