松田るか(写真:Tomoko Tominaga)

 芦屋市制施行80 周年記念事業の一環として製作された映画『あしやのきゅうしょく』が、2月4日から関西で先行公開され、3月4日からは全国順次公開となる。この映画で新任の栄養士を演じた松田るかに、主演映画への思いを聞いた。

-今回は新任の栄養士役でしたが、自分なりに調べたり、勉強したことはありましたか。

 実際に調理をしたりするのは調理師さんのお仕事で、栄養士さんは献立を作ったり、業者さんに発注したりするのが仕事なので、今回は、新たに技術や知識を習得したりすることはなかったです。ただ、もともと栄養学のようなものはすごく興味があったので、例えば、ビタミンCは何に効くのかとか、何と何を食べ合わせるとより吸収率が上がるのかを調べたりすることは以前からしていました。

-これまでは割と個性的な役が多かったですが、今回は違いましたね。

 今回、この役を演じるに当たっては、何か頼るものが明確にない分、どうしても、自分が今まで生きてきたことや性格が反映されるので、むしろそれを使っていくしかないなと思いました。なので、しっかりと役を作り込むよりも、恥ずかしいところがあると思いました(笑)。その中で、自分の中にある真面目さや、ちょっと頑張りやさんの部分を、この役に当てはめればいいのかなと思いました。

-出身は沖縄ですが、今回は神戸育ちの役でした。言葉などで苦労はありましたか。

 確かに言葉の違いは大きかったです。スムーズに出てこなければいけないですし、少しでも言葉を間違えたら一気に説得力がなくなってしまうのでなかなか大変でした。白羽(弥仁)監督が芦屋のご出身なので、こまめに確認をし合いながら、進めていきました。完成した映画を見て、言葉に関しては、すごく下手ではなかったかなと思いました(笑)。

-この映画から、給食はどのようにして作られるのかや、栄養士や調理師の仕事ぶりを知ることもできますが、演じる上で何か気を付けたことはありましたか。

 栄養士の役だからということで、特に気を付けたことはありませんでした。職種や役職よりも、子どもたちとどう接するかを考えていました。多くは実際に芦屋の小学校に通う子どもたちでしたが、改めて子どもは元気だなと思いました。カメラが回っていないところでも、こまめにたくさん話をしました。やっぱり芦屋のことは彼らの方がよく知っているので、いろいろなことを教えてもらったり、関西弁も学ばせてもらいました。とても楽しい撮影でした。

-給食で何か思い出に残っていることがあればお願いします。

 小学校のときに、たった一度だけ給食にキムチが出てきたことがありました。水で洗ったような色も付いていないものでしたが、私たちにとってはとても刺激的でした。私は辛いものが得意でしたが、同級生たちは「辛い」と騒ぎだしました。今回、栄養士の役をやってみて、あれは、子どもたちにいろんなものを食べさせたいという気持ちからの、栄養士さんのチャレンジだったのではないかと思いました。

-この映画のテーマは「食べることは生きること」でしたね。

 食べることで人とのつながりができたり、食べることは、ただ生物学的に生きるのではなく、本当に人間として生きることにもつながっていると思います。

-最後に、観客に向けて映画の見どころをお願いします。

 食事は、基本的には1日3回必ずするものです。そうした身近なものが持つ温かさをお届けできたらと思います。コロナ禍になってから、人との距離を取ることが求められ、一人で食事をされる方も多くなったと思います。でも給食は、作る方やメニューを考える方、材料を生産している方と、たくさんの人とのつながりで作られています。この映画を通して、皆で食べるご飯の温かさを感じていただけたらと思います。

(取材・文/田中雄二)