会場に入り目に飛び込んできたのは、ギターとピアノはもちろんドラムやデスクトップPC、さらには見慣れない機械まで、ステージ上にギュウギュウに配置されたさまざまな楽器。えー、これ全部ふたりだけで演奏するの!? パッと見の印象ではバンドでのライブより楽器が多い気すらする。やがて場内が暗転し、スクリーンに流れるSF映画のような映像が観客の期待を煽っていく。そして「TAKUYA OHASHI」「SHINTARO TOKITA」の名前が刻まれ、ふたりがステージに姿を現すと、いよいよ”ダブルス・スタート”だ。
暗闇の中でふたりがまず手を伸ばしたのはギターでもピアノでもなく、先述した謎の機械。約25cm四方の四角い枠の中にボタンがグリッド上に並ぶその機械は、大橋の手元に1台、常田のピアノの上に4台並んで置かれている。まず常田がボタンを押すとダンスミュージック然とした四つ打ちのビートが響き渡る。そのリズムに合わせて大橋がリアルタイムで上モノの音色を乗せていく。初っ端から機械によるエレクトロ・セッションが繰り広げられるのだ。次第にメロディらしきものが生まれてきたところで常田はグランドピアノに向かい、大橋はそれと向かい合うように設置されたひと回り小さいピアノの前に腰掛け、大橋のカウントによってみずみずしい和音が鳴らされる――こうしてこの日のライブは『アイスクリーム シンドローム』で幕を開けた。
この一連の演出からも分かる通り、このライブはふたりだけでシンプルに音を届ける”だけ”のものではなかった。「すべての楽器をふたりだけで演奏すること」、そして「それ以外は何をやってもいい」。これが今回の”ダブルス”でスキマスイッチが自身に課したルールだったのだ。