スキマスイッチの原点、そしてついにアフロ降臨!

撮影:(C)岩佐篤樹  拡大画像表示

『奏(かなで)』『ふれて未来を』といったこれまで何度も演奏されてきた初期の名曲が見たことのない表情を見せたり、最新シングルの『ユリーカ』が原曲顔負けのダイナミズムで迫ってきたりと、終盤にきて歌も演奏もさらなる高みを目指すようにボルテージを上げていくふたり。ロングツアーの間で鍛えあげられたパフォーマーとしての筋力は並大抵のものではないのだ。

熱を帯びた会場を『晴ときどき曇』の多幸感あふれるアンサンブルが包んでゆく。ゆっくり、しっかり、しかし軽やかに刻まれるリズムと、常田の吹くピアニカの懐かしい響きに乗せて歌われるのは、「この世界で生きてゆくことをいかに肯定するか」というメッセージである。晴れわたる空が突然曇って世界が闇に包まれてしまったとき、どうすればまた歩き続ける勇気を持つことができるのか。そんな深遠なテーマを平易な言葉とメロディで描ききった『晴ときどき曇』は、スキマスイッチの新たなマスターピースとして「♪Sunny Cloudy」のシンガロングとともに会場を包み込んだ。

キャリア最初期に発表された『ただそれだけの風景』もまた、スキマスイッチワールドを象徴する楽曲だ。主人公は桜並木の下に咲いたタンポポ。人はみんな上を向いて歩き、自分に目を向けられることはない。それでも自分らしく懸命に生きようとするタンポポをユーモアとアイロニーたっぷりに描いたこの曲に自分を重ね、共感を覚える人も多いだろう。何者にもなれない”市井に生きるものたち”の目線が、わざとらしくなく嫌味にならず、実にまごころを持って描かれている。ただそれだけの、しかし大切で愛おしいわたしたちの世界を、音楽で照らそうとする姿勢。それは近年の作品である『晴ときどき曇』にも言えることで、つまりスキマスイッチの表現の核にあるものは、デビュー当時から全く変わっていなかったのだ。

いや、昔と今のスキマスイッチで、ひとつ大きく変わったことがある。鍵盤・常田真太郎のアフロ頭がいつの間にか消えていたことだ! というわけでアンコールでは懐かしのアフロヘアがうやうやしく降臨! 「ここでやっとスキマスイッチだって気がついた人もいるかも(常田)」と自虐ネタを飛ばしつつ、「初心に帰ってデビュー曲をやります!(大橋)」と放たれた『view』では、真っ赤に染まる照明の中でアフロも飛ばんばかりの熱っぽい演奏を見せつける。

常田の演奏にはたまに文字通り鍵盤を”叩く”ような瞬間があって、非常にスリリングなロック的興奮を覚えることがある。指先だけではなく全体重を乗せて鍵盤を叩いている感じ。緻密に音を構築する優れたアレンジャーとしての顔とは違う、プレイヤーとしての荒々しさが痺れるほどカッコいいのだ! そんな演奏が終わると、アフロは再びうやうやしく返還されたのだった……さようならアフロ! 次会うのは20周年のときかも?