――今回のツアーは新曲も2曲あるとのことですが。

MORRIE: 今回はやってみないとわからないなってのを2曲くらい出して。1曲は本当にライブでやるまでわからないんじゃないかな。曲はいつも自分なりにテーマ別やパターン別にストックしてるものは結構あるんですよ。この2曲はもう15、6年前……90年代後半から ネタ的にはあって。1曲目の『Labyrinth』は7拍子だし、もう1曲の『Blackstar』はライブでやってみないと反応はわかりませんね。曲としてはまとまってるんですけど。ライブでやってみないとわからない曲ってあるんですよ。そういうスリリングさは……まあ春だし(笑)。冒険的なことを。ということでこの2曲にしました。

――さきほど90年代後半に作っていたとおっしゃってましたけど、MORRIEさんは92年に渡米されて、それ以降はNYを拠点に活動されていた と伺っています。そして95年のソロアルバム『影の饗宴』以降、05年にCCが始動するまで、日本での活動はほとんど無かったと言って良いと思うんですけ ど、当時は現在のように日本でコンスタントに音楽活動をやろうと思っていたんですか?

MORRIE: 簡単に言うと、その頃はそもそもまず日本に帰ってなかったんで。数人の友人を除いては交流もなかったし。人生いろいろあるじゃないですか(笑)。まあそれでも曲は作ってたし。

――音楽の創作活動はずっと続けていたと。

MORRIE: いや、「小説でも書こうかな」とか大それた野望を抱いたり……(笑)。1年くらいちょっとマジで書いたことあったんですけど、あまりの才能の無さに挫折しました。

――読んでみたいですけどね。

MORRIE: どっかに残ってるかも。日本にはないですけど。僕が死んだらねえ、どうしてもらってもいいですけど。

――Twitterなどを拝見してると、よく本の話も出てきますし、ものすごく読書家なイメージがありますが、ご自分で文章を書いてるイメージはあまりなかったので。ブログなどもやっていらっしゃらないようですし。

MORRIE: 言うことがないですから。自分のことを書くことには興味が無いし。「これ食った」とか「どこ行った」とかまったく興味無い。他人のそういう「ああした、こうした」とかも。本当に興味があるのはその人の考えてること感じていることだよね。さっきの自然に対してどう考えているのかとか。
 

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――子供の頃からそうだったんでしょうか。

MORRIE: 小学校の頃は図書室に行って『ルパン』物や子供向けの江戸川乱歩の作品を暗闇でずっと読んでいた記憶がありますね。暇さえあれば図書室の片隅に行って(笑)。中学校にあがると推理小説にハマって。海外のオーソドックスな、エラリー・クイーンやアガサ・クリスティとかから始まって。一番好きだったのはディクスン・カー。猟奇的な話が多いんでね。

 
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中学校2年の時に、横溝正史のリバイバルブームがあって、作品が角川文庫からバンバン出ていたんです。それを全部買って読んで。僕、兵庫県出身なんですけど、西側の岡山寄りなんで、横溝正史の小説の舞台に近所が出てきましてね。『八つ墓村』の元になった「津山32人殺し」の事件があった場所も結構近いといえば近いんですよね。『悪魔の手毬唄』だったかなあ……、金田一耕助が姫路から電車に乗って鬼首村に行く時に、姫新線に乗るんですけど、ちょうど僕の地元の駅が出てきて「おおっ」ってなるとか(笑)。

 
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あとは筒井康隆。中学から高校にかけて読んでましたね。『乗越駅の刑罰』なんて最初に読んだ時にすごい衝撃を受けて、『熊の木本線』も。忘れられないですね。あの不条理さってカフカに通じると思うんですよね。夢が現実であるというような、そういうリアルさ。逆に僕、「現在」の方がリアルじゃないと思うんですよ。だいたいみんな「リアル」という言葉を使うときに「衝撃」とかね、なんかこう「生きがいがある!」とかさ、そういう特権的な時間をみんな「リアル」っていうでしょ? 飯食ったり話してたり、そういう日常ではなく、衝撃を普通に「リアル」って呼ぶじゃないですか。使い方として。