フィッシングメールが巧妙になっている。クレジットカード会社を偽って、メールを送り付け、前月の高額な利用実績の確認を求める体で詐欺サイトに誘導するもの。実際に新サイトへの移行を予定しているサイトからのメールを装い、会員登録の再確認を求める、という口実で詐欺サイトに誘導するもの。不正利用の疑いから、ECサイトの利用を一時停止しているので会員の確認を求めるとしながら、フィッシングサイトに誘導するもの……パターンはまちまちだ。以前なら明らかに詐欺メールとわかるおかしなデザインや文面のメールが多かった。ところが最近は、本家のサイトと同じデザインやロゴを使いきちんとした日本語で書かれているものが増えた。本物のメールと区別が難しく、つい騙されてクリックしそうになる。
66歳以上でインターネットを全く利用していない人は3割を超えているという。セキュリティソフト会社のアバストが実施した調査で分かった。55歳から65までは90%が「定期的に利用している」としたが、66歳以上では「全く利用していない」が33%もあった。インターネットを利用していない理由として、「複雑すぎる」が29%で最多。そのほか、「インターネットに接続できるデバイスがない」(18%)、「インターネットを利用するには年齢が高すぎる」(18%)などと並んで、「オンライン詐欺や脅威が心配」(18%)とする回答も多かった。巧妙なフィッシングメールを筆頭に危険がそこここに隠れている現状では無理もない。
実は高齢者こそインターネットの恩恵は大きい。足腰が弱って、なかなか自由に外出できないようになっても、ネットショッピングは強い味方だ。日用品から生鮮食品までネットで買える。届くのも早い。動画視聴やWeb閲覧など、リタイアして時間のある高齢者にとって、絶好の娯楽ツールにもなる。高齢者が安心してインターネットを使える環境が必要だ。日本でインターネットの人口普及率が7割を超えたのは2005年。当時現役の60歳未満だった人たちなら、何らかの形でインターネットを使った経験はあるだろう。今でもある程度使いこなせる可能性は高そう。現在77歳ぐらいまでの人たちだ。リスク管理が多少危なっかしくても、安心して利用できるようにはならないものか。
不正なサイトにアクセスできないようブロックするフィルタリングソフトはいくつもあるが、ほとんどは子どもを守ることが主眼。高齢者向けに特化したものは少ない。一旦被害を被ると、経済的なインパクトが大きいのはむしろ高齢者の方だ。財産をかすめ取ろうとする輩から高齢者を守ることに特化した総合セキュリティソフトや機器が欲しい。万一の際の保険とセットにする商品があってもいい。現在バリバリ使っている現役世代も、歳を取れば判断力も鈍る。そこに付け込まれて被害が起きる。高齢者が安心して利用できるインターネット接続環境のニーズは高そうだ。(BCN・道越一郎)