石沢一役の反町隆史

 「今どきの若いモンは」。誰もが一度は耳にしたことがあるこの言葉を毎回繰り返しながら、全ての働く人々にエールを送る「WOWOWオリジナルドラマ 今どきの若いモンは」が4月9日からスタートする(全8回放送/全22話)。吉谷光平の同名人気コミックを原作に、仕事に不慣れな新入社員・麦田歩(福原遥)や、その先輩の若手社員・舟木俊(中村海人 Travis Japan/ジャニーズJr.)たちが奮闘する日常を、ユーモアを交えてつづる“お仕事ショートドラマ”だ。部下の麦田や舟木に「今どきの若いモンは」の一言とともに的確なアドバイスを送る“究極の上司”石沢一役で主演するのは、唯一無二の存在感を武器に活躍する反町隆史。放送を前に、撮影の舞台裏やドラマの魅力、自身の生き方について語ってくれた。

-石沢のキャラクターをどんなふうに受け止めましたか。

 とても人間味にあふれたキャラクターです。分かりやすいキャラクターではあるけれど、ドラマの中で石沢の過去が描かれる場面があり、今はこういう上司だけど、昔はそうではなかった、ということが分かる。人間として成長している様子が描かれているので、すごく共感できるなと。

-演じる上で心掛けたことは?

 どちらかというと、相手と同じ目線でものを言うのが彼のよさで、この作品のテーマでもあります。だから、決して命令ではなく、部下の麦田なら麦田の目線に立って、舟木なら舟木の目線に立ってものを言う。僕自身、学生時代にサッカーをやっていましたが、そこで学んだのは、厳しい練習の中でも仲間がつらい思いをしていたら、同じような気持ちになって、助け合うのがチームワークだということ。それは、どんなことでも同じです。

-劇中、石沢は部下にさまざまなアドバイスをしますが、反町さん自身は後輩の役者にアドバイスをしたり、相談に乗ったりすることはありますか。

 僕も、若い頃は黙って先輩方の背中を見ながら、役者としての在り方を学んできたので、そういうことはしないようにしています。だから今回も、若い役者に「これはこうだよ」とか「ああいうことだよ」みたいなことは言っていません。ただ、僕も主演ばかりではないので分かるんですけど、現場の空気って、主役の方がどういう時間を過ごしているのかによって変わってくるんです。だから僕は、自分から若い俳優に声を掛けたりして、皆が「この現場に行きたい」と思えるような楽しい雰囲気を作るように心掛けています。

-若い俳優の福原遥さんや中村海人さんと現場で接した印象は?

 2人とも仕事をして、いろんなところでもまれてきているから、やっぱり柔軟ですよね。役に徹していますし、いい意味ですごく真面目です。僕の若い頃は、もうちょっといい加減でしたから(笑)。

-では、今の反町さんが若い頃の自分に何かアドバイスするとしたら?

 僕が俳優デビューしたのは19のときでしたが、生き急いでがむしゃらにやっていたところがあるので、今思えば、もう少し腰を据えて、ゆっくりやってもよかったかなと。特に役者は、早咲きよりも、少し遅咲きぐらいの方がよかったりするので。

-人生経験を積んでからの方がいいと?

 そうですね。人間として、男として経験を積み、自分を磨き、引き出しを増やした上で世に出ても悪くないんじゃないかなと。

-逆に、19歳でデビューしてから今までで、年齢を重ねてよかったこと、価値観が変わったことなど変化はありますか。

 僕ももう48ですが、年齢を重ねたことで大らかになり、全ての時間をある程度許して、楽しめるようになりました。昔は生き急いでいたこともあり、自分の欲が前面に出たり、「こうしなきゃいけない」とがちがちに考えたりしていたんですけど、そういうところは徐々に変わってきました。それはやっぱり、俳優という仕事をずっと続けてきたことに加え、子どもを育てたことも大きいのかなと。

-そういう意味では、反町さんが父親として、お子さんにこれだけは大切にしてほしいと考えていることはありますか。

 「あまり頑張り過ぎるな」ということは常日頃言っています。もちろん、人が80点のところを100点、110点を取るのは大切かもしれないけど、僕はやっぱり、いつどんな状況でも60点、70点を取り続けて、バランスよく生きる方が大事だと思う。だから、頑張り過ぎず、バランスよくやってほしいなと。でも、バランスよく生きる方が、むしろ難しいんですけどね(笑)。

-石沢は、コンピューターの操作など、自分ができないことについては若者をリスペクトする一面があります。反町さん自身が、若者をリスペクトしている部分はありますか。

 ネット社会に詳しいのは、やっぱりすごいですよね。パソコンも簡単に使いこなしますから(笑)。僕らの仕事は、必ずしもそこに重点を置かなくてもできるので。ただ、その一方で、情報が発達し過ぎた社会に生まれたことは大変だな、とも思います。

-確かにそうですね。

 だから、「今どきの若いモンは」というせりふの中には、いろんな感情があると思うんです。「今どきの若いモンはすごいよな」と感心することもあれば、「今どきの若いモンは…」とブツブツ文句を言いたくなるときもあるし、「今どきの若いモンは大変だよな」と同情することもある。もちろん、僕らが若い頃もこの言葉はありましたし。

-そういう意味では、職場の日常を描いたこのドラマを、若い人にどんなふうに楽しんでもらいたいと考えていますか。

 職場のさまざまな人間模様が描かれているので、これから社会に出る若い人たちは、このドラマを通してそういうことを学んで、いい人たちと出会ってほしいですね。僕自身の経験を振り返っても、やっぱり人とのつながりは大切ですから。

(取材・文/井上健一)

 「WOWOWオリジナルドラマ 今どきの若いモンは」4月9日(土)午後10時30分 放送・配信スタート。