19世紀末から20世紀初頭のフランスで活躍した画家、アンリ・ル・シダネル(1862-1939)とアンリ・マルタン(1860-1943)に焦点をあてた、国内初の展覧会『シダネルとマルタン展』がSOMPO美術館(東京都新宿区)で開催中だ。

「最後の印象派」の二大巨匠、シダネルとマルタンに焦点をあてた、日本初の展覧会。印象派を継承し、穏やかで神秘的な光の表現を展開した二人の足跡を、油彩を中心とする約70点を通してたどる。

印象派以降、さまざまな「イズム」が登場したベル・エポック期のフランス美術界だが、前衛画家たちによるフランス近代絵画史とは別の“もうひとつの本流”を担ったシダネルとマルタン。穏やかな画風ゆえにこれまで前衛画家たちの影に隠れていたが、近年フランス本国を中心に再評価の機運が高まっている。

本展は全9章と長めの構成。具体的には「エタプルのアンリ・ル・シダネル」、「象徴主義」、「習作の旅」、「アンリ・マルタンの大装飾画のための習作」、「ジェルブロワのアンリ・ル・シダネル」、「ラバスティド・デュ・ヴェールのアンリ・マルタン」、「ヴェルサイユのアンリ・ル・シダネル」、「コリウールとサン・シル・ラポピーのアンリ・マルタン」、「家族と友人の肖像」。

見どころの一つは、光の表現。シダネルとマルタンは深い友情で結ばれ、同じ芸術観を共有しながらも、それぞれの活動拠点に由来して、対照的で異なる光の表現ーーシダネルは北フランス特有の霞がかった柔らかな光を、マルタンは南仏の眩い光を描いている。

また、ヤン・ファリノー=ル・シダネル氏の協力で、写真や映像などさまざまな資料もあわせて展示されているのも特徴。同館学芸員の岡坂桜子さんは「作品はもちろん、作品が生み出された環境や雰囲気をいろいろなヴィジュアルを通じてご覧いただけるかなと思います」と話していた。

会期は2022年6月26日(日)まで。開館時間は午前10時から午後6時(入館は午後5時半まで)。休館日は月曜日。観覧料は一般1600円、大学生1100円、高校生以下無料。


同館では、本展の会期中、ウクライナおよび近隣国における人道支援活動に向けた寄付を行う。館内に募金箱を設置するほか、ミュージアムショップで販売する当館のゴッホ《ひまわり》ポストカード の売り上げの一部を、ウクライナ全域と近隣国で脆弱な立場にある子どもたちとその家族、避難民などの支援のために活動する団体に寄付する。

さらに、SOMPOホールディングスとしても、本展の入場者数および紹介動画(https://www.youtube.com/watch?v=tOR5EiUeq-s)の視聴数に応じて寄付を実施(上限は1億円)する。

取材・文・撮影:五月女菜穂