4月1日から「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が施行された

【家電コンサルのお得な話・78】 成年年齢が2022年4月1日から18歳に引き下げられたことを話題とし、テレビなどでも熱い議論が繰り広げられていた。成年年齢以外にも、4月1日から複数の新しい法律が施行。中でも中小企業で特に注意したいのが、「改正労働施策総合推進法(以下、パワハラ防止法)」である。

パワハラ防止対策は顧客満足の向上につながる

4月1日から施行された「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」により、中小企業でも職場におけるパワーハラスメントの防止対策が義務化された。

筆者も仕事で、中小企業の経営者によくお会いするが、総じてバイタリティにあふれパワフルな方が多い。ただ、その長所の延長上に、結構、「気合いと根性」という精神論的な路線から抜け出せていない企業もあり、正直なところパワハラ防止法の対応について「大丈夫かな?」と一抹の不安を覚えることもある。

パワハラ防止法は罰則こそないものの、パワハラが発覚すれば「厚生労働省からの勧告やそれに対する適切な対応ができない場合の社名公表」などが考えられるし、被害者から裁判を起こされる可能性もある。

中小企業の経営者からすれば、「うちは大丈夫だろう」と防止対策を怠っていると、企業経営に重大なダメージを負うこともあるため注意が必要である。

事業主が必ず講じなければならない措置には、大項目だけでも、

(1)事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

(3)職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

(4)併せて講ずべき措置

——があり、それぞれの大項目の中に、さらに複数の項目が示されている。

「お金をくれる」という給付金や助成金、補助金の申請でもわずらわしいものだが、手間が掛かる法令への対応は、さらにその感を強く抱くことだろう。

しかし、予期せぬ出費や企業イメージの低下を防ぐことは経営リスクを回避する上でもとても重要であり、この法律の施行を「今までの経営を見直す良い機会」と前向きに捉えたい。従業員一人ひとりを尊重し、「さらに働きやすい職場の実現」につなげられれば、生産性はもとより、顧客満足の向上にもつながるだろう。

すでに施行された法律であり、十分な対応がされていなければならないが、社会保険労務士に頼り切っていたなど、少しでも不安のある企業は今からでも遅くないので、経営者自らの目で対応内容を再確認し、全社員へ徹底していただければと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。