ロシア国家劇場賞受賞、サンクトペテルブルグ都立最高劇場賞に輝いた注目のバレエ団、ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエが2年ぶりの来日中だ。マリインスキー・バレエのプリンシパルとして第一線で活躍し、惜しまれつつも引退したアンドリアン・ファジェーエフがトップとしてバレエ団を率いる。来日公演は12月22日「くるみ割り人形」より開幕。その直前リハーサルの様子を取材した。
クリスマスのパーティから物語が始まる「くるみ割り人形」。主人公の女の子クララがドロッセルマイヤーおじさんからくるみ割り人形をプレゼントに貰う。おもちゃの戦争に巻き込まれたり、王子様からお菓子の国へ誘われ、お菓子の精たちと楽しく過ごす「くるみ」の舞台は、さながら絵本から出てきた夢の国のようだ。
序曲がはじまると、雪降る夜の町並みが舞台上に照らし出される。その道を様々な人々が通り過ぎてゆく。ある人は忙しそうに、ある人は楽しげに、そのひとりひとりに、それぞれのクリスマスの物語を感じさせる演出だ。ともすれば本編の入り口でしかないとも言える往来のワンシーンだが、監督であるファジェーエフはそれぞれを注意深く見つめ、気になればすぐさま「ストップ!」と声をかけ、自らスタイルを示し、そして舞台は、より生きたものに変化していく。
開演直前のリハーサルにもかかわらず、わずか3分程度の序曲のリハーサルに費やした時間は正味15分。このディティールへのこだわりは全編を通して発揮されており、特にコールドバレエひとりひとりへの眼差しや指摘が印象に残った。開場直前ぎりぎりまでのリハーサルでも一切妥協しないその姿勢は、その日の観客の目にも納得のいくものであったに違いない。
注目ダンサーはアレクセイ・ポポフ。ワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業後、マリインスキー・バレエを経て、2016年のシーズンからファースト・ソリストとしてバイエルン国立バレエの団員となり、世界をまたにかけ活躍している。また同じくワガノワ・バレエの薫陶を受けた長澤美絵も出演。ドネツク国立バレエを経て、2010年にキエフ・クラシック・バレエに入団。2014年には、エストニア・タリン国際バレエコンクールにて賞に輝いた。
来日公演は12月22日神奈川・藤沢市民会館 大ホールでの「くるみ割り人形」で開幕。クリスマス後からは演目を「白鳥の湖」に変え、昭和女子大学 人見記念講堂、オーチャードホール、大宮ソニックシティなどを巡演。1月14日(日)大阪・グランキューブ大阪 メインホールまで。チケットは発売中。
取材・文:yokano