『怪物くん』や『妖怪人間ベム』、アニメ『TIGER & BUNNY』など、ヒット作の脚本を次々に手がけている西田征史。近年「世界を救うようなスケールの大きな作品」が続いた西田が、「今度は逆に、普通の人たちのみみっちい話を描きたかった」との思いから執筆したのが、小説『小野寺の弟・小野寺の姉』である。そしてそのアナザーストーリーを、西田自身の脚本・演出で今年7月に舞台化。西田に現在の構想を訊いた。
木造一軒家に二人だけで暮らす、小野寺より子と進の姉弟。お互いいい歳ながら恋人もおらず、だがそれなりに楽しい日々を送っていた。だがそんな二人が、些細なことでケンカをしてしまい――というある一日の物語。そこには西田ならではの笑いと優しさがギュッと詰まっており、「閉塞感を感じながら生きる現代。その息苦しさをほんの少しでも和らげられるような作品になれば」と西田は語る。
その主人公であるより子と進を、西田はある俳優たちをイメージしながら描いている。それが舞台版にも出演する、片桐はいりと向井理だ。「はいりさんは全体を考えて、出るところと引くところ、ちゃんと計算して芝居をしてくださる。その点、より子も気配りの人なので、はいりさん以外にこの役は考えられませんでした。向井くんはすごくかっちりした印象がありますが、心の中では実はかなり面白いことを考えている人。役によってはそれが出せないこともありますが、今回の進役では、普段の彼の持つ面白さを存分に見せられると思います」。
前出した映像作品のほか、舞台脚本・演出家としても活躍する西田。しかし今回の脚本は、「今までで一番難しかった」と苦笑いを浮かべる。「いつもはまずやりたいことがあって、キャラクターがそこから派生していくんですが、今回は小説があって舞台を別ストーリーで作る必要があったので、まずキャラクターありき。そういう意味ではわりと制約が大きくて…。一度書き上げた90ページの脚本をすべてゼロにし、二人が住む木造一軒家を舞台にした話に変更したことで、やっとこれだってものが書けたと思います」。
片桐、向井以外にも、西田が「単純に好き(笑)」と言う、百戦錬磨の個性派たちが集結。またより子の友人役として、新たにユースケ・サンタマリアの出演も決まった。「ユースケさんらしい飄々とした感じは出してもらいつつ、弱々しくて可愛らしいユースケさんを見せられたらなと。そこは稽古をしながら、一緒に探っていけたら」と西田。これらキャスト陣と西田が、いかなる化学反応を見せるのか? 7月の開幕を待ちたい。
公演は7月12日(金)から8月11日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、8月22日(木)から28日(水)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。天王洲アイル周辺の店舗では「小野寺の弟・小野寺の姉」タイアップ企画を実施予定、詳細は公式ブログ(https://butai-onodera.blogspot.jp/)にて。東京公演の追加公演も決定、7月24日(水)午後2時の回を6月1日(土)午前10時より発売。
取材・文:野上瑠美子