綴(Vo)/(撮影:市村岬)

『DECADANCE - Counting Goats … if I can't be yours -』では、ファンのシンガロングが会場を包んだ。

《空は今日もミドリ色で 決して溶け合う事はない いつか混ざり合えるならば 終われCounting Goats》

活動休止前ラストツアーのファイナルステージ、そのこと暗喩するような歌詩が、ファンひとりひとりによって歌い上げられるさまに、胸が潰れるような思いがしたのは筆者だけではなかっただろう。

前半戦はここで終わり、一時暗転。暗闇にMEJIBRAYのロゴのバックドロップと、メンバーの名前を呼ぶファンの阿鼻叫喚めいたコールだけが浮かび上がっていたことが、脳裏にこびりついて離れない。

恋一(Ba)/(撮影:市村岬)

中盤のミドルチューンやダウナーなナンバーのセクションは、『醜詠』『-XV-』がまるでひとつの物語かのように紡がれ、綴の表現者としての真骨頂を、ここにきてまた思い知らされた。

鮮血のように赤いライトがステージを照らし出すなか、虚ろな表情で朗々と歌われた『醜詠』。「醜い現実よ この心だけは…」という曲中のセリフを、乾いた嘲笑を浮かべて呟く綴に、底冷えする恐怖を感じさせられる。

ノイジーなギターと、地を這うようなグロウル、ねっとりと媚びたファルセットが不穏に絡み合った『-XV-』では、曲の最後に「忘れさせはしないから……」と、綴が狂人のごとく微笑み、虚空を見つめる。MEJIBRAYにしか描けない地獄の底のような景色が広がり、私たちの胸にまたひとつ消えないトラウマが刻まれた。

浮遊感のあるシンセサイザーと美しいメロディーが印象的な『Hatred × Tangle red × Hunger red』から、MEJIBRAYは一気にクライマックスへと疾走しはじめる。美しいピアノシーケンス、楽器隊のスリリングなプレイ、限界の向こう側を振り絞るように歌う綴、ファンの大合唱がひとつになった『ナナキ』は、涙無しでは見届けることができなかった。MEJIBRAYの、“争う事もなく痛みナキ日々”は、いつかもう一度くるのだろうか―――。

(撮影:市村岬)

官能的な女性コーラスとアコースティックギターのサウンド、情感溢れるメロディラインの『DIE KUSSE』からは、MiAがギターをギブソンのフライングVに持ち替えてプレイ。このギターはMEJIBRAY結成当時に彼がメインギターとして使っていたものに、ゴールドの加工やネックへのLEDの埋め込みなどを施したもので、この日初めて披露された。

シニカルで、いつもひょうひょうとした笑顔のMiA。彼はどんな思いで、この日のためにこの一本を準備していたのだろうか。