「この賑やかなパレードは、一体どこへ向かっているのだろう。」
筆者は6月18日の赤坂BLITZで、《MEJIBRAY6周年記念全国TOUR 「HANGMAN」》ファイナル公演の開演を待ちながら、そんな風に同ツアーの初日の開演前に考えていた事を思い出していた。「HANGMAN」ツアーの開演前の会場BGMは、某テーマパークの某エレクトリカル・パレードで流れる事でお馴染みの『Baroque Hoedown』である。
「こんなに楽しげなBGMでも、MEJIBRAYが使うとまるで“HANGMAN”に因んで、絞首台に向かうパレードの中にいるような気分だなあ。」と感じた筆者の嫌な予感めいたものは、恐ろしい事に当たってしまっていた。MEJIBRAYは、そのツアー初日公演終了後に、2017年内を持っての活動休止を発表したのだ。
突然すぎる活動休止。その理由について、そしてその後の活動について、MEJIBRAYは未だに沈黙を貫いている。同ツアーは、彼らにとって死に場所を探すようなものだったのかも知れない。そしてその旅のひとつの終わりが、今日のこのライヴなのかも知れない。いつもの彼らのライヴの開演前とは違った雰囲気が、2階席までギュウギュウの赤坂BLITZには漂っていた。
定刻過ぎに幕が開き、ギラギラ輝くライトや爆音の登場SE、立ち込めるスモークに彩られてメンバーが登場すると、ファンのメンバーコールの絶叫がこだました。いつも通り、ヴィジュアル系の概念そのものが服を着て、そこに存在しているかのように美しいメンバー達からは、なにか動揺や悲哀めいたものは感じられなかったが、1曲目のイントロを聴いて愕然とする。
1曲目にドロップされたのは『And Then There Were None.』。同曲タイトルはアガサ・クリスティ著の推理小説『そして誰もいなくなった』の原題からの引用である。活動休止を待つバンドのライヴの1曲目として、あまりにも意味を持ちすぎていた。
2曲目『パラダイム・パラドックス』も、アッパーチューンながら活動休止に対する暗喩のようなものを感じとれる歌詩の曲である。綿密に組まれたのであろうセットリストに、得体の知れない恐ろしさを感じる。この日のMEJIBRAYは、いつにも増して全体のサウンドのバランスや、バンドとしての演奏のクオリティに安定感があり、それが益々恐怖感を煽った。
「ぶっ飛べ!クールモンスター!!」
綴(Vo)がファンに向かって高らかに叫び、『VICTIM(ism)』へ。思わず飛び跳ねて踊ってしまう4ビートのイントロから、地鳴りが聴こえそうなほどに会場が揺れた。官能的な女性コーラスとアコースティックギターのサウンド、情感溢れるメロディラインの『Black baccarat』ではファンのコールが割れんばかりに響く。
『Black baccarat』のアウトロから、綴のファルセットを残して『ネペンテス』へと繋がる流れは非常に美しかった。ステージから溢れる逆光にメンバーのシルエットが浮かび上がり、MiA(Gt)のファズトーンが綺麗に広がった。
中盤のミドルチューンやダウナーなナンバーのセクションは、綴が鳥肌が立つほどの名演で魅せる。今のMEJIBRAYの、迷いや苦悩や憤りを全て代弁しているかのような綴のパフォーマンスに、胸がえぐられるような思いを抱いたファンも多かったのではないだろうか。
ピンスポに照らされた綴が絞り出すように、終わってしまう愛を歌った珠玉のバラード『EMILY』。歌い終わってマイクをおろした綴の、何かを諦めたような表情が非常に印象的だった。