『悲哀』では低く唸るストリングスパートと、女役と男役を演じ分けながらすすり泣くように歌い上げられる救いの無い歌詩に、絶望感を抱かされる。『-XV-』ではトーチに炎が灯り、まるで見てはいけないカルトの宗教行事のような景色が広がって、背筋がゾッと寒くなった。
ファンのクラップに合わせて血を吐くようなグロウルで唸る綴。お立ち台に足を組んで腰掛け、ギターをつま弾く様が西洋絵画の天使のようなMiA。その美しい相貌から表情が抜け落ち、虚ろな目でフロアをじっと覗き込む恋一(Ba)。妖艶なルックスで機械仕掛けのおもちゃのようにタイトにリズムを刻むメト(Dr)。MEJIBRAYは本当に綺麗で恐ろしくて、完璧に全力で“ヴィジュアル系”をやっているバンドだと改めて感じさせられた。
中盤戦を締めくくった『醜詠』では、綴がマイクを置いて泣き叫んで発狂する。
「醜い現実よ この心だけは!!!!!!」
お立ち台にすがるように伏せて叫んだ彼の姿は、パフォーマンスではなく本当の狂人のようだった。活動休止へと進む死のパレードの中で研ぎすまされていく彼は、あまりにも美しくて痛々しい。
“生きたいよこれからも 争う事もなく痛み”ナキ”日々が来たら……”
綴が涙をこらえるように呟き、『ナナキ』へ。ハードロック調のイントロ・Aメロで楽器隊のスリリングなプレイがぶつかり合い、綴の歌声が高らかに響く。綴がフロアにマイクを向けて起こった、ファンの大合唱が感動的だった。ファンに向かって「お前らが、ライヴの空間こそが、MEJIBRAYだ」と度々言い続けてきた綴の言葉が胸をよぎる。筆者の斜め前にいた女性ファンは、顔を覆って嗚咽をもらしていた。
「東京!……ありがとう。死ぬ気でかかって来い!!」
綴の絶叫を皮切りに『Sliver』がドロップされる。同曲はMEJIBRAYが初めてリリースしたミニアルバムのタイトルナンバーであり、「HANGMAN」ツアーの会場でのみ再録DVDが販売されていた。
“痛みも全て愛すと誓う 重ねた悲鳴 瞳閉じないで. Dead slivers.”
歌詩からは活動休止への覚悟、そして「どんなに痛くてもこの死のパレードを最後まで見届けてくれ」という懇願めいたものが感じられた。それに応えるファンのコールも凄まじい。思わず涙が溢れ、レポートをとる手が止まる。
ライヴはいよいよクライマックスへと突入し、ハチャメチャにカッコいいアッパーチューンが3曲連続で畳み掛けられる。「FUCK! FUCK!」のコールが痛快な『嘘と愚行-それもまた人間らしいって神様は笑ってるの-』。ファンのモッシュでフロアが一つの生き物のようにうねった『原罪の林檎』。爆音とスモークと熱気のカオスはどんどん白熱し、『枷と知能-それってとても人間らしいって神様は笑ってるの-』がこれでもかと駄目押しのようにドロップされる頃には、会場の空気が薄くなっていた。